第四十一話 勝負が続いてその八
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「身体には嘘は吐けないでしょ」
「どうしても身体を庇うね」
「痛いところね」
まさに無意識でだ。
「そうなるでしょ」
「それがコンディションだね」
「今私が言うね」
それになるというのだ。
「この場合はそうなのよ」
「ほんの少しの痛みが試合を左右することもある」
「そうした時もあるのよ」
「特に今みたいな時は」
「そう、実力伯仲だとね」
余計にとだ、こう僕に話してくれた。そしてだった。
日菜子さんは僕達の前で試合を続けた、試合終了間際になってやっと。
一本を取った、それでだった。
その一本から試合終了となってだ、日菜子さんは準決勝進出を決めた。そのことを決めてからだった。僕達はというと。
日菜子さんを笑顔で迎えてこう声をかけた。
「これで、ですね」
「準決勝進出ですね」
「おめでとうございます」
「あと二つですね」
「ええ、何とかね」
笑顔で微笑んでだ、日菜子さんも応えてくれた。
「出来たわ。ただね」
「ただ?」
「ただっていいますと」
「あと二回勝てば確かに優勝だけれど」
それでもという口調でだ、日菜子さんは僕達に話してくれた。
「その二回がまた大変だから」
「一戦一戦がですね」
池田さんが僕に言って来た。
「大事ということですね」
「だから二回というよりは」
そうした考えよりもというのだった。
「一回、そしてまた一回ね」
「一回ずつですか」
「必死にやっていくわ」
日菜子さんは汗を拭きながら僕達に話してくれた。
「そうした考えよ」
「そうなんですね」
「ええ、それとね」
「それと?」
「さっきは相手が手を少し痛めたから」
日菜子さんもわかっていた、このことは。
「それがこちらに有利になったのよ」
「相手のコンディションですね」
「それが関係したわ、ただこれはひょっとしたら私もね」
考える顔で汗を拭きつつだ、日菜子さんは話してくれた。
「負けていたわ」
「そうなっていましたか」
「空手では付きものでしょ、痛くなることは」
手足で技を繰り出し合って打ち合うものだ、それならだ。
「私もいつもだから」
「けれどそれが」
「ええ、私に勝たせてくれたわね。ただ」
「それでもですか」
「次は私がそうなるかもね」
痛む場所が出来たりしてだ、その分だけコンディションが悪くなるというのだ。
「だから気をつけないとね」
「それはわからないですよね」
「だから一回一回ね」
その試合をというのだ。
「やっていくわ、全力でね」
「わかりました、それでは」
「ええ、次の試合まで休ませてもらうわ」
こう言ってだ、日菜子さんは。
控えの場で物凄く落ち着いたお顔になってだった。そのうえで。
思いきり気を抜いて
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ