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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
第四十一話 勝負が続いてその七
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「コンディションと」
「運よね」
「相手の人の調子かな」
「それね、それと運は」
 これはというと。
「願っても仕方ないわ」
「そればかりはね」
「そう、何がどうなってもね」
 それこそというのだった。
「わからないものだから」
「急にどっちにどう転ぶかわからないからね」
「偶然よ、運は」 
 まさにそれに他ならないというのだ。
「何時どちらがよくなるか悪くなるか」
「人間じゃわからないね」
「あれだけ頼りにならない、しかも怖いものはないから」
「だからこの試合でも」
「頼りにするものじゃないわよ」
 とても、というのだ。
「この試合でもね」
「そういうものだよね、じゃあ」
「コンディション次第よ」 
 全てはそれに尽きるとだ、池田さんは結論付けて観戦をはじめた。それは僕も同じだった。そして試合がはじまって。
 日菜子さんと東京の人は互角の勝負を繰り広げた、お互い一歩も引かない。むしろ何か鏡合わせの演舞の様だった。
 その激しい試合の中でだ、何かが違ってきた。
 相手の人がだ、不意に。
 左手で日菜子さんを攻めた、しかし。
 日菜子さんはその左の一撃を防いだ、その時にだった。
 相手の人の動きが鈍った、それから。
 微妙にだ、その人の動きがだった。左手だけだが。
 遅れてきた、僕はふと気付いたけれど池田さんもだ。その人の動きを見つつそのうえで僕に対して言って来た。
「あのね」
「相手の人だよね」
「大家君も気付いたのね」
「何か左手の動きがね」
「鈍くなったわよね」
「ほんの少しだけだけれど」
「多分、ちょっとだけだけれど」
 それでもとだ、僕に話してくれた。
「さっきの一撃をね」
「日菜子さんに防がれたそれが」
「そう、その時に痛めたのよ」
「怪我したのかな」
「怪我ってところまではいかなくても」
「痛いんだね、今」
「空手だとこうしたこともあるのよ」
 打ち合い、蹴り合いのその中でというのだ。
「痛い思いをすることがね」
「やっぱり拳や足を痛めるんだよね」
「そう、だからあの人も」
「その痛い分だけ」
「動きが鈍ってるのよ」
 例え少しだけにしてもというのだ。
「そしてそれがね」
「大きいかな」
「そうかも知れないわ」
 例え微かなものとしても、というのだ。
「実力伯仲なだけにな」
「そのちょっとした違いが」
「勝負の決め手になるのよ」
「それがスポーツだし」
「空手なのよ」 
 今日菜子さんがしている武道だというのだ。
「その証拠に徐々に日菜子先輩押してきてるでしょ」
「うん、そう言われてみるとね」
 そう見えた、僕にも。
「そうなってきてるね」
「これまでは完全に互角だったけれど」
「それが徐々に日菜子さん有利になっ
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