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IS インフィニット・ストラトス〜普通と平和を目指した果てに…………〜
number-32
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離してもらう。
 頬を赤く染める彼の顔を見て、嬉しくなって彼の手を引っ張って残りの階段を一息に上り切った。


 ――――。
 さっきまで感じていた高鳴りが潜めた。
 神社特有のどこか神聖な厳かな雰囲気の中に懐かしさを感じる。もう二度と帰ってくることの無いと思っていた自分の家に帰ってきた。それだけで何かこみ上げるものがある。
 隣の蓮も真面目は表情をしてまっすぐ前を見ていた。
 帰ってきた。
 あと一度だけでもここに戻ってきたい。そう思って九年、十年。それぐらい時間を使った。また家の土を踏めた。感慨深いものを感じながらゆっくり神社に向かって歩みを進める。


「……あら? もしかして、束ちゃん?」
「!! ……雪子叔母さん」
「やっぱり! 久しぶりねえ、元気にしてた? ずいぶん大きくなって……」
「……お父さんと、お母さんは、いるの?」
「……いいえ、いないわ。伝言はあるけど……聞く? あなたにとってはつらいモノよ。それでもいいの?」


 神社の境内に姿を現したのは、四十代後半のおっとりとした雰囲気を持つ女性だった。束の様子から見て親戚のようで、それも随分と気にかけてくれたいい人のようだった。今はまだ束の隣にいる蓮のことに気付いていないようだが、気づいたらそのあたりの関係をぐいぐいと聞いてきそうな人でもあった。
 そんなことを考えている蓮とは裏腹に束は、両親の伝言を聞く覚悟を決めて、視線で先を促した。


「……そう、じゃあ言うわよ? 『お前なんてもううちの子じゃない、絶縁だ。赤の他人のお前は二度と私たちの前に顔を見せるな』よ。実の娘にここまでいうなんて……ひどいわ」
「……っ」


 予想は、していた。覚悟も決めていた。それでも自分を産んでくれた親なのだ。その実の親から否定されたことに、計り知れないほどの衝撃を受けた。どうでもいいと思っていたのに、どうして?
 あんな両親なんて見限って当然なんだという思いと、両親に捨てられたという悲しみが心の中を半分ずつ占めていた。


「……束、ちゃん?」
「……だい、じょうぶ。悲しいし、つらいけど、私はそれだけのことをしたんだから」


 強がっていることが蓮から見ても雪子から見ても明らかだった。けれども、そこを指摘するようなまねはしない。これは彼女の問題なのだから。
 だから、話題を逸らす。


「ところで束ちゃん。隣にいる素敵な男の子は……もしかして?」
「えっ? あ、うん。ちょっと違うけど、私の大切な人だよ」
「あら〜? あらあら、まさか束ちゃんが先になるとはねえ……これは予想してなかったわ」


 微笑ましそうに束を見る雪子。先程の自分の発言に束は若干頬を赤くしていた。同じように蓮も赤くしていたが、そんなに動揺はしていない
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