第二百十九話 九州に入りその八
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「御主達もじゃ」
「はい、これよりは」
「天下の為に」
「働いてもらう」
こう言うのだった。
「頼んだぞ」
「では及ばずながら」
「我等天下にこの命を捧げまする」
「してじゃ」
信長は二人の後ろにいる若武者も見た、若いがその顔立ちはしっかりとしていてしかも全身から強い気を放っている。
その具足と陣羽織の若武者を見て彼にも声をかけた。
「御主が立花宗茂じゃな」
「はい」
「左様です」
宗茂自身も信長に答えた。
「それがしが立花宗茂といいます」
「幼名は千熊丸といったな」
信長は彼の幼名も言ってみせた。
「そうじゃな」
「かつてはそう呼ばれていました」
「そうじゃったな、では千熊よ」
早速だ、信長は彼を幼名で呼んでみせた、そのうえで。
あらためてだ、彼は宗茂のその若々しくかつ勇ましさも湛えた見事な顔を見てそれから立花と高橋に言った。
「二人共よき子を持った」
「いえ、まだ」
「まだ未熟者であります」
二人はこう言う、だが。
信長はその二人にだ、笑みを浮かべて言った。
「わしはそうは思わぬ、だからな」
「千熊をですか」
「上様の下に」
「欲しいのじゃが」
こう言ったのである。
「よいか」
「そして、ですか」
「千熊を天下の将としてか」
「使って頂く」
「そう仰るのですか」
「御主達は大名としたい」
大友家とは独立して、というのだ。信長は大友家と龍造寺家はそれぞれ領地をかなり小さくさせて大名として留めてだ、主な家臣達を大名として独立させた。二人もそれぞれ立花家、高橋家として独立させるのだ。これは鍋島家も同じだ。
そしてだ、宗茂はというのだ。
「千熊はな」
「上様の直臣として」
「そのうえで」
「わしの傍に起きたい、無論立花家の家督も継がせる」
これは当初のままにというのだ。
「それでよいな」
「はい、では」
「宜しくお願いします」
「千熊のこと」
「頼み申す」
「ではな」
こう二人に話してだった、信長は宗茂を幸村や兼続と同じく自らの傍に置いたのだった。そのうえで家康に対して笑って言った。
「わしの平八郎を得たわ」
「立花宗茂殿を」
「うむ、これでまた満足した」
「ははは、吉法師殿は相変わらずですな」
家康はその信長に彼もまた笑って返した。
「何でも欲しがりますな」
「優れた者はな」
「ですな」
「欲しいものは何でも手に入れる」
笑ってだ、信長はこうも言った。
「それがわしじゃ」
「そして天下も」
「その手に入れたものもな」
それもというのだ。
「ただ手に入れるだけでなくな」
「愛でますな」
「そうする、そして手離さぬ」
信長はそれもしないのだ。
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