巻ノ七 望月六郎その十二
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「泳げなくては話にならぬ」
「はい、隠れる為にも」
「やはり水練は忍にとって欠かせませぬ」
「どうしてもです」
「泳げなくてどうしようもありませぬ」
「ですから」
「ならよい、拙者も泳げる」
幸村自自身もだった、彼にしても水練は得意なのだ。
「そして何かあればな」
「はい、では」
「それではですな」
「泳ぎはですな」
「暇があれば」
「他の術と同じでな、励むべきじゃ」
まさに常にというのだ。
「わかっておるな」
「はい、それでは」
「何かあれば泳ぎます」
「そしてです」
「腕がなまらぬ様にします」
「冬以外は励むべきじゃ」
冬は水が冷たく泳げたものではない、しかしだ。
それでだ、こう言うのだった。
「拙者もそうしておる」
「そういえば御主も泳げるのか」
ここでだ、海野は清海に言った。
「今言ったが」
「そうじゃ、わしも泳げるぞ」
「左様か、意外と器用なのじゃな」
「これでも忍術を身に着けておるからな」
「左様か、では逃げる時はか」
「泳いで行ける」
「わかった、ではその時は頼むぞ」
水が関わる戦や逃げる時はというのだ。
「わしも己だけでしか逃げられぬ時もある」
「わかっておる、わしも逃げる時はな」
清海自身も言うのだった。76
「身一つじゃ」
「ならよい、やはり逃げることはな」
「忍ならば多いからのう」
この辺りが武士と違う、忍は隠れることが大事であり逃げることも多いからだ。それで逃げることも念頭に置いているのだ。
それでだ、清海も言うのだった。
「わしも何度も逃げたことがある」
「暴れてか?」
「うむ、謝っても追いかけてきてのう」
こう望月にも話す。
「それで仕方なくじゃ」
「よくその大きな身体で逃げられたな」
「御主も結構大きいではないか」
清海は望月にこう返した。
「わし程ではないにしても」
「しかし御主はまた特別大きいではないか、山の様ぞ」
「そう言うか、しかしな」
「それでもか」
「わしは泳げるし隠れることも出来るぞ」
忍の術を備えているだけにというのだ。
「だから安心せよ」
「ならよいがな」
「まあ泳げぬと駄目じゃ」
清海もこのことは強く言う。
「術が限られるし実際に逃げられぬ」
「あと馬はどうじゃ」
根津は馬術のことに言及した。
「それは」
「馬か」
「そうじゃ、真田家は信濃、信濃は山が多いが馬も多い」
「馬のう」
清海は馬と聞いて無念そうにこう言った。
「乗れぬ」
「わしも馬は」
「わしもじゃ」
「わしもそれはな」
幸村以外の者が皆苦い顔になって述べた。
「苦手じゃ」
「どうもな」
「馬に乗ることは」
「駄目じゃ」
「そうじゃな、わしもな」
清海は特
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