A's編
第三十三話 後(2)
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れたもので、近くにおいていたストールを膝の上に置くところまでが一連の動作である。
「ありがとな」
「どういたしまして」
はやてちゃんのいつものお礼にいつものように答えながら、僕は車椅子の後ろへと回る。ハンドルようなものに手をかけて、さあ、いざ出発だ、というタイミングで、うぐっ、という呻きを上げて不意にはやてちゃんが胸を押さえた。
「はやてちゃん!?」
何が起きたっ!? と思わず驚いてしまい、急いではやてちゃんの前に回って屈んだ。彼女の顔は苦しそうな顔をしていたが、それも一瞬だ。大丈夫? と声をかける間もなく、すぅと熱が引いたように苦しそうな表情は鳴りを潜めた。代わりに浮かんでいたのは、驚愕したというような、信じられない、という表情だった。
「リィンフォース………」
え? とはやてちゃんがつぶやいた言葉に動揺してしまう。どうして彼女が今、この場所でその名前をつぶやくのだろうか? はやてちゃんはリィンフォースさんのことを知らないはずだ。だが、彼女の今のつぶやきには確かな動揺が見て取れた。
「どういうことや? なんでや?」
………まさか、と思った。彼女のつぶやきは、間違いなく現時点で行われている、行われようとしていることを知っている。
可能性があるとすれば、リィンフォースさんが特別なデバイスであることだろうか。彼女は確か特殊なユニゾンデバイスというもので、はやてちゃんと一体化していた。元より闇の書は、はやてちゃんのリンカーコアから魔力を蒐集していた。そのことを考えれば、闇の書―――リィンフォースさんとはやてちゃんは魔力的な何かでつながっていてもおかしくはない。
そして、そのつながりは、リィンフォースさんの消滅という緊急事態をはやてちゃんに伝えたのだろうか。
「なぁ、ショウ君、何か知っとるんやろ!? 何なんや、これはっ!?」
さすがにこの期に及んでは、何も言わずにつれていくということはできないようだ。そもそも、こんな朝早くから連れ出そうとしたところに、この予感ともいうべき衝動だ。僕が何かを知っていると疑ってもおかしい話ではない。
できれば、はやてちゃんには最後の最後に真実を知ってほしかった。その分だけ、彼女は思い悩むだろうから。苛まれるだろうから。だから、リィンフォースさんは、儀式が始まって、引き返せないぐらいのぎりぎりにつれてくることを望んだし、僕もそれに同意した。
「………分かったよ。でも、続きは移動しながらでもいいかな? 時間が近づいてきている」
知られてしまったからには逆に一秒でも早くはやてちゃんをリィンフォースさんのところへ連れて行きたかった。少しだけでも長くリィンフォースさんとはやてちゃんの時間を作ってあげたかったから。いや、これはもしかした
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