A's編
第三十三話 後(1)
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いくと、少しだけ鼻を突く強い匂いがした。僕が知っているようで知らない匂い。親父がよく夜に晩酌として飲んでいる飲み物―――アルコールのにおいだった。
よくよく見てみれば彼女が座っていた場所の上に置かれたのは麦の色をしたビンに入った液体―――おそらくウィスキーだろうか―――だ。近くには氷も置いてある。まさに晩酌といった様子だ。
銀髪の美女が夜中にウィスキーをロックで嗜んでいる。
文言にしてみれば、ここが食堂でなければ非常に絵になる光景だ。この場所にいられることを幸運にさえ思えただろう。だが、よくよく考えてみればおかしい話である。なぜなら、彼女は人間ではない―――ユニゾンデバイスという遙か古来の道具なのだから。
どうして彼女がお酒を飲んでいるのだろうか? 眠かったはずの頭を働かせてみたが答えは出なかった。彼女が酔うとは到底思えない。だから、本来の酒の用途には使えないだろう。
―――ならば、何のために?
少しだけ、頭をひねらせて思い悩んだが答えは出ずに、結局のところ直接聞いてみることにした。
「えっと………リィンフォースさんは、ここで何をしているんですか?」
「ん? ああ、これか」
彼女は僕の視線が片手に持っているグラスに向かっていることに気付いたようだ。自分でも無意識に飲んでいたのか、今更、という感じで丸い氷と半分ほどに満たされた液体を見ていた。そこに酔った人間特有の酩酊感はない。意識ははっきりしているようだった。
「………弔いの酒かな」
「弔いですか?」
誰かを悼むために飲むお酒だという。だが、今回の戦いで亡くなった人はいないと聞いている。彼女は一体誰を悼んでいるのだろうか?
僕のそんな心の声が聞こえたのか、あるいは僕の表情がわかりやすいのか、リィンフォースさんは自分の陰に隠れて見えなくなっていたものを身体を避けて、僕からも見えるようにしてくれた。そこにあったのは白いフォトフレームに入れられた一枚の写真だった。
真ん中に黒い本を手に持って、はやてちゃんが車いすに座っており、はやてちゃんの後ろには車椅子のハンドルを握った笑顔の蜂蜜色の髪の女性、その隣にはどんな顔をしていいのかわからずに憮然とした表情をしながら腕を組んでいるピンクの色の髪の女性、はやてちゃんに抱き着くように小柄な赤い髪を三つ編みにした女の子、そして、はやてちゃんの足元には大きな蒼い毛を持つ犬が寝そべっていた。
「彼女たちは―――」
どこか見覚えのある女性たち。だが、最近の―――今日の怒涛の出来事のせいかあまりはっきりとは出てこない。
「シグナム、ヴィータ、シャマル、そしてザフィーラ―――ヴォルケンリッタ―、この夜天の書の守護騎士たちだ」
「ああ……」
彼女のたち
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