第十話
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く反吐が出る」
すぐに俺の思考が彼女に届いたようだ。呆れたような調子だ。
俺は顔が真っ赤になったことに気づき、余計に恥ずかしくなった。
「いや、そんなんじゃないよ。俺は変態じゃない。ロリコンじゃないし。あ、いや……でも、すごく可愛いとは思ったけどね」
と、訳のわからない事を口走る。
少女にボロクソにけなされても、どういうわけか俺には全然応えない。普通なら怒ったり落ち込んだりするような事を言われているんだけど。
「やはり、あの時もう少し力を入れて蹴り潰しておけば良かった。もういい。……はぁ、なんでなんだろう。わたしは、やはり選択を誤ったのよ」
投げやりな感じで恐ろしいことを言い、少女は話を打ち切った。
俺は少女の追求から解放されたことにホッとした。
「じゃあ、学校からとりあえず出るとしますかね。……しっかり掴まっててよ」
俺は彼女にそう言うと、助走なしで跳躍する。
少女が俺の首に必死になってしがみつく感触を感じながら、俺の体に宙に舞った。
塀の高さを少し超えたところでジャンプの頂点となり、ゆっくりと降下しながら俺のつま先が塀の上に乗る。
ここで一息。
そのまま塀の向こう側に着地しようと思ったんだけど、監視カメラの撮影エリアがちょうど落下予定地点を捉えていることに気付いたんだ。
片足、しかもつま先だけで全体重を支えているけど全然苦痛じゃない。余裕だ。この体勢でも数時間はいられる。
カメラが落下点から離れた。
俺はそっと踏み切った。
3メートルから落下したらかなりの衝撃のはず。しかも女の子を抱いたままなんだ。
それでも俺はふんわりと着地した。着地音さえしない。猫がしなやかに着地するような感じかな。
少女は何の衝撃も感じなかったはず。
着地するとすぐにカメラがこちらを向いてくるのを知覚し、即座にダッシュして安全圏まで移動する。
そうして路地の陰に隠れる事に成功し、俺は少女を下ろした。
「とりあえずは脱出成功です、姫様」
「そ、ごくろうさま」
素っ気なく少女は言う。
まだ怒っているみたい……だね。
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