第八話
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当は俺に対してだったのか。
「あのぬいぐるみは……寧々、如月に殺された女の子がくれたんだ。……そうか、彼女は俺を護ろうとして……」
「自分の命よりお前のことを大事に思っていたみたいね……。とりあえずお前が生き残ったということで彼女は少なくとも後悔を一つせずにすんだということね」
俺はストラップからぶら下がった二つのぬいぐるみを見つめた……。
寧々はそこまで俺のことを想っていてくれたのか。……彼女の想いにまるで気がつかず、親友が好きだと聞いてそいつのために二人の仲を取り持とうとした俺。ドラマのように自分の想いを隠し、自分が身を引くことで親友の愛を成就させてやろうと煩悶することなんてなかった。特に何も感じていなかったんだ。俺にとって、寧々は結構可愛い女の子でただの友達。その程度にしか思っていなかった。
ああ、俺は彼女を傷つけていたんだなと初めて気づいた。
漆田の為にいろいろと動いて、寧々とくっつけようとした俺を見て、彼女はどう思ったんだろうか?
自分の無神経さに今更ながら腹が立った。
そして、寧々に迫られたら、特に好きでもないのに、親友と付き合いだしたばかりだというのに(てめえでくっつけておきながら)、キスをするし、あわよくば最後までいっちゃえって思っていた俺。
本当に……最低だよな。
そんな俺なんかを好きでいてくれた彼女に、俺はなんて言えばいいんだろう……。
胸が締め付けられるように痛んだ。
でも、彼女はもういない。
死は、あまりにも無情だよ。
もう彼女に謝ることもできないし、彼女に俺の愚かさを罵られることもできない。
「俺は、……俺は馬鹿だな。本当に馬鹿だ」
思わず呟く。
それは自分自身に対する失意だった。
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