25.西が東で南が北で
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言いたいのだろう。が、残念ながら彼女の方向音痴は筋金入りらしく……
「あのっ!」
「……なんですか?」
「そっちは北通りに繋がる道ですけど……」
「……………」
「……………」
気まずい沈黙が空間を包む。
この瞬間、彼女もとうとう自分の方向音痴を自覚せずにはいられなくなったらしい。
この何を言っても彼女を傷付けてしまいそうな微妙すぎる状況に、互いにどう接していいのやら……精一杯考えた末、リングアベルは苦し紛れにこう言った。
「あー、俺たちこれから冒険者通りのギルドに行く予定なんだが、別に俺達の後ろを見知らぬ美女がついてきていても気にはしない。な、ベル?」
「え……あ、ああ!そうですね先輩。冒険者通りなんて誰でも通る道ですからね」
先輩の少女に対する精一杯の思いやりを察したベルはこくこくと頷く。
つまり、ここで直接「道案内をしようか?」と言ってしまうと彼女のプライドを傷つけてしまうから、遠回しに表現することで何とか誤魔化そうという作戦である。
「……では、私とあなた達の行き先が偶然一緒でも問題はないですね……」
意気消沈した少女の返答に、ベルコンビはほっと一息ついた。
この少女、放置しておくと延々と道を彷徨った挙句にダイダロス通りで本格的に遭難しかねない。ここで意固地にならなくて本当によかった。
「さて、では道すがらに偶然一緒の道を行く少女に話しかけてみるか。俺の名はリングアベルという。この町で冒険者をする皆の人気者だ!」
「あ、僕はベルっていいます!先輩と一緒に冒険者してるんですよ?」
「……私は、アニエスです」
どこかいじけたようにプイっと顔を逸らして、彼女はそう名乗った。
アニエス――アニエス・オブリージュ。日記に記された彼女の特徴と一致していた。
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