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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第三七話 求道から究道へ
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、目を見開いた師匠が言葉を発した。そして、意識を失いその首が垂れ落ちた。


「師匠……今まで、ありがとうございましたッ!!!」


 師、伊上一振はこの三日後、脳挫傷による昏睡から目を覚ますことなく静かに息を引き取った。
 それから、己は多くの戦場を渡った。
 意味を求めたからだ。

 形のない実体のないそれを求める行為の無為さを理性で判断はしていたが、そんなのを認めるほど人間が出来てはいなかった。

 もう、諦めることは許されなかった。払った対価が己の命を懸けた修練だけであったのならそれは許されただろうが、(おれ)の人生に価値と意味を見出し全霊を賭し消えて逝ったゆいと、その道を突き進めと命を対価に背を押してくれた師に背かぬ為に。

 もう、諦めも後悔の何れにも浸ることなんぞ許されない、許せない。
 もはや、(おれ)に残されたのは武士道という道を究める事のみ……それが修羅道だとしても。

 きっと、(おれ)はこのとき……求道者としての性を定めたのだろう。



「……もう、宜しいのですか?」
「ええ、別れは済みました。己がもう此処に来ることは無いでしょう。」

 墓石に背を向けたところで少女から声がかかってきた。

「此処にきて良かったと思う。アイツらの最期の言葉の意味を自分なりに再確認出来た。……もう、道を求める迷走は終わりだ。これから見つけた道を究めるのみ。」
「真理を探究するのを求道と呼びますが、貴方はそれとは少し違うようですね。道の究極の形を為すために進んでいるように見受けられます……さしづめ、究道者。」

 求道者ではなく究道者、武士道や剣道の道を歩む者を表すのにそれは皮肉にも合致している。言いえて妙である。
 道を求めるのが求道、道を究めるのは究道。面白い表現だ。

「そんな貴方に問うても良いでしょうか。」
「何なりと。」

「道とは何でしょう。」
「己だけの芯念を以て貫くこと。そして何所まで貫けるかを究めるモノ。」

「ふふふ、筋金入りですね。いえ、信念という芯があるのですから元から筋金が通っている。まったく愚にも付かぬことを言いました。」
「では、お先に失礼します。」

 振り向き、墓前を後にする忠亮、彼に少女はぽつりと語り掛けた。

「ええ、ではまたご機会があれば会いましょう。……斑鳩卿。」

 少女から名乗った覚えはないというのに現在の名を呼ばれた。

「ああ、機会があればな……暴れん坊将軍。」

 彼女に対し忠亮も、風が微かに運ぶ程度の声で小さく呟くーーーそして


「もう、大丈夫だよゆい。答えは得た。……己も頑張って生きてみるさ。」

 哀しいという思いはある。されど後悔はない。
 今までの苦しみを乗り越え、耐えてきた
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