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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第三七話 求道から究道へ
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る。分厚い雲が流れ、朧月の月光が差し込んできた……月夜が戻ってくる。

「――――かはっ、はぁはぁはぁ……!」

 まるで呼吸を忘れていたかのように、肉体が呼吸を再開した。……立っていたのは忠亮だった。

 剣術の死合に於いて、その雌雄を決するのは太刀の速度である。

 既に十分の初速を得ている師の一撃に対し、後手で勝てる確率は低い……だが、その不利を覆す最奥の手、それを奥義と呼ぶ。

 自身へと振り下ろされる太刀の切っ先を太刀で捉え、それを削ぎ落す勢いで振り下ろすことで相手の太刀を外へと往なし、かつ相手の脳天を叩き割る兜割を同時に繰り出す攻防一体の後手必勝の技。

 何てことない、剣道・剣術の基本中の基本である面を突き詰めた奥義。
 それこそが、この真壁派一刀流奥義、太刀削ぎである。


「……!師匠ッ」

 不意に我に返る、木刀を投げ出すと倒れる師に駆け寄りその体を抱き起した。

「うっ………いい加減、腹ぁ括ったか忠亮。」
「師匠…俺は」

 意識が戻ったのか、師はその額から鮮血を流しながらうっすらと目を開けた。

「てめぇに迷いなんざ似合わねぇ、諦めも後悔も死んでからで間に合うだろうが。
 てめぇの征く道は端から決まってんだろう―――遅かれ早かれ、てめぇが剣を執ったその瞬間によ。」

 こんな時代だ。己の徴兵は決まっていた―――そして己は遅かれ早かれ剣を執った。
 そしてやはり剣に生きたはずだ。

 BETAなんて分かりやすい悪が存在する世の中だ。それを邁進する障害は無いに等しい。
 戦い其の物を悪とする下らぬ粉飾も、建前に過ぎぬ法律を唯一絶対の聖典のように扱う狂った社会もない。


「人の生き死にになんて本来意味なんて無いんだよ。生きたいから生きて、そして勝手にくたばるだけよ――儂が死ぬのにも理由はあっても意味なんぞあるまいよ。」
「意味が……ない。」

 ダメだ、それは駄目だ。
 人の死に、生に意味がないのなら、彼女は何のために死んだ。何故、死ぬべき俺ではなく彼女が死んだ―――無意味なモノには価値が無い。
 彼女の生も死も、意味が無くて価値が無いというのか――――そして之から死ぬ多くの命も、そして己が手に掛けた貴方の死も。

 それダメだ、絶対に赦せない。

「それでも、人の生き死にに意味を持たせるモノがあるとしたら、それは所詮は人の意思よ。」

 要するに、各々の人間の感想に過ぎないという事だ。
 ならば……この赦せないという感情と、この残された生にこそ意味がある……違う、之から生まれさせるのだ。

「俺は、俺は………アイツの死を無意味にしたくない、絶対に!」
「なら進んでいけ忠亮。これからはテメェがテメェの道を究めるために………」

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