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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第三七話 求道から究道へ
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いた。

 咄嗟の回避行動で、その眼球を狙ったであろう刺突は回避したがその鋭い一撃は刃の有無に関わらず摩擦で人を切り裂く。人間の耳程度なら練達者であれば木刀であっても切り落とせてしまう。



「はっ!意味か、そんな下らんモノ何ぞどうでもいいわ。儂を倒さねば貴様が死ぬ、それだけよッ!!」

 弱肉強食、人類の有史以前から存在する唯一絶対の法則。建前でしかない法律ではなく法則、即ち節理。


「……それは俺がゆいを死なせてしまったからですか。」

 許嫁をむざむざと死なせた上に、その父を手に掛ける。そんな事が出来るわけが無い――――ならば、此処で師匠に討たれるも因果という事かもしれない。


「確かにそれは一因ではあろうよ、しかし所詮はきっかけに過ぎぬわ。―――遅かれ早かれ、儂等は殺し合う定めよ」


 ぎりぎり、と地面を踏みしめ相手を押しやろうと肩を押し付け合う拮抗の中でのやり取り――それが師弟での最期のやり取りとなるのはもう、変えようのない事実だと嫌でも知らしめて来る。

 どちらか、或いは……双方の死という決着はもう変えられないだろう。

「………」
「何を呆けているッ!!」

 師匠が重心の移動に合わせ地面を蹴り飛ばす。
 八極拳の震脚に類似する技法、その勢いに押され、体がわずかに浮く。

「っ!」
「フンハァッ!!」

 其処から柔道の受け身を攻撃に転化した靠撃(こうげき)。肩を相手の懐に叩き込むその技が胸元に叩き込まれた、

「―――かはっ!」

 肺の空気が一気に吐き出され、呼吸が止まる。
 同時に体が吹き飛ばされ、同にか山の斜面を転げ落ちる勢いを利用し起き上がるが乱れた呼吸は容易くは戻らない――――まずい、致命的な隙を晒してしまう。

「いゃやあああああああ――――――――ッ!!!」


 顔を上げると、木刀を手に迫ってくる師匠の姿が朧月から零れた月光によって見えた。

(ここで死ぬのか―――)

 そんな諦観が脳裏を過った、恐らく師匠によって頭蓋を克ち割られ己の生命は終わるのだろう。
 満たされない人生ではあったが、振り返ってみればそう、悪くはない人生の様にも感じられた。―――これが走馬燈というものかと、妙な得心を覚えた。

 そんな時だった。


 ”……ちゃんと君は私を愛してくれたよ。だから私は死ねるんだよ“
 
「――――――!」

 一生をこれから過ごすのだと思っていた女の最期の言葉が蘇った。

「■■■■■■―――――――ッ!!!!」

 声にならない叫び、その渇いた叫びに突き動かされるままに、足を整え木刀を上段に構えた。
 そして……二つの影が衝突した。

「…………」

 どさり、と人の倒れる音がす
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