第八十二話
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何のスイッチだと思索を巡らすより早く、その異変は形となってこの世界に現出した。炸裂装甲をAA−12が撃ち破る音。一際大きい爆音。……俺が立っていた大地が崩れていく音。
「なっ……!?」
崩れていく大地の中で何とかバランスを取りながら、リーベがやったことを悟る。彼女が押したスイッチは、どこかに仕込まれていた爆弾のスイッチで、その爆弾は俺たちの崖を壊すほどの威力だった。……要するに、爆弾で崖を吹き飛ばし、俺の足場を崩したのだ。それもリーベの足場には何の影響もない、と、完全に俺は誘い込まれていた。
――だが、自身の不覚を後悔するのは後だ。今自分がやるべきことは、足場が完全に崩れ落ちるより早く、防御を失ったリーベにAA−12の弾丸を叩き込むことだ……!
リーベが立つ無事な足場へと復帰すべく、崩れ落ちる足場を飛び回り、比較的大きい足場に着地する。一瞬だけその足場で安定すると、AA−12を構えて狙いをつけ――俺の身体を一筋の赤い線が貫いた。この戦いに入って感じていなかった、《弾道予測線》……リーベが持っている銃は、本人の申告通りならば一つしかない。
「言ったでしょ? ……さーよーなーら、だってさ!」
リーベが崖から離れなかったのは、決して俺が落ちるところを見物したかった訳ではなく。……ただ、自らの手でトドメを刺す為だけに。
リーベは故人を悼むような似合わぬ十字を切る動作をした後、彼女が持つ唯一の銃……《黒星》を俺に構えていた。それと同時にこちらの射線も通り、飛来する石つぶてや破片などAA−12の前では障害物にすらなりはしない。落下中の最後のチャンス……だが、俺はAA−12を撃つことは出来なかった。
――あの銃が放つ弾に当たるわけにはいかない!
けたたましく警鐘を鳴らす脳裏に従い、俺はAA−12を撃つことよりその攻撃を避けることを優先し、その足場から飛び移る。弾丸は弾道予測線に忠実に従い、俺が今までいた足場に当たり、もちろん追尾したり爆発したりはしない。何の変哲もない拳銃の弾だ。
「くそ、位置が悪い……!」
追撃といきたいところだったが、飛び出した方向が悪くリーベの姿も見えないため、ここからの追撃は不可能。乗れるような破片も既になく、俺はそのまま湖へ落ちていく。少しでも落ちた際の衝撃を減らそうと、崖に向かって力づくで手甲を突き出すと、ガリガリと耳障りな音をたてながら勢いを緩和していく。
……あとは何の抵抗も出来ず、俺は崖だった場所から湖へと落下する。高所からの落下ダメージがかなり炸裂するが、勢いを減らしたおかげか何とかHPの全損は免れる。AA−12も何とか無事で、早く湖から脱出しなくては――と考えた俺を、何かが取り囲んでいた。逃げ場をなくすように。
――恐らく、水中用の機雷
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