暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜Another story〜
現実世界
第122話 記憶の欠片
[1/8]
[8]
前話
[1]
次
最後
[2]
次話
〜埼玉県所沢市総合病院 最上階の病室〜
時刻は朝の9時を回った所。
あの世界であれば、もうとっくに起床し、支度を済ませ、これから攻略へと向かう時間帯。あの世界での現実がそうだった。
……だが、ある時期から それは変わった。
彼と結ばれてから、生活のリズムは一気に変わり、そして、様々な色、鮮やかな色、そして光も見えていたんだ。……新居に住んだあの2週間は、あの世界の全てだった、といってもいいくらいとても濃縮された時間だった。
――……でも、それは儚い夢、だったのだろうか。
かつて、彼は言っていた。
『……眼が覚めたら全て無くなってしまう。……この手に留めておきたい、いつまでも心に留めておきたい。……だけど、全ては儚い夢なんじゃないか……』
彼は、そう言って、僅かに震えていた。
この気持ちをずっと、心に持っていおきたい、でも不安で堪らないと。
あの時の自分は、勇気づけようとした。
『自分も同じ。でも、仮に例えそうだとしても、必ずあなたを見つけてみせるから』
そう答えた筈だ。
そして、帰ってくるのは、優しい抱擁。あの気持ちと感触は決して夢なんかじゃない。
……でも。
現実の世界の方が余程、非情だと……思える出来事もあった。
「……ねぇ、お姉ちゃん。キリト君……いつも来てくれて、お姉ちゃんのこと、待ってるんだよ? ……あの人が来た時も。気丈に振舞ってくれた。……早く帰ってこないと、望まない人と番いにされちゃうかもしれないんだよ……?」
病室で、眠り続ける彼女……姉の明日奈を見つめながら、玲奈はそう言っていた。
頻繁にこの場に訪れる男、……和人ではないもう1人の人の男。
いつも笑顔をみせている人だが、昔から何処か嫌悪感が拭えない人。
それは姉も同じだった。
親の言うとおりの人間付き合いをしてきた2人だったけど、彼との付き合いだけは頑なに拒否を示していた。
――……あの人がいつか、姉の夫になる。隣に立ってるのは和人君じゃない。
そんな事が嫌で嫌で仕方が無かった。
でも、両親の2人は、彼のことを信頼して、更に会社の役職も上位だ。だから……。
「っ……!」
これは玲奈自身の話ではない。姉である明日奈の話。……だけど、大好きな姉が、……と思うと自分の身を斬られるのも同義なんだ。姉の苦しみは、自分の苦しみでもあるのだから。
「……リュウキ、……はやと、くん……」
玲奈がしきりに呟くのは、今は見ぬ彼の事。でも、絶対に生きていると信じている。絶対に、この世界に戻ってきていると。
「はやと、くん……たすけて、……隼人君……助けて……っ」
ずっと、信じている。
[8]
前話
[1]
次
最後
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ