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豹頭王異伝
曙光
英雄の種族
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きは見せぬと思います。
 キタイへの遠征に重要な役割を果たすのは、タリア伯爵領ですね。

 タリア伯爵ギイ・ドルフュスの妹姫、アレン・ドルフュス。
 レントの白バラ、タリア水軍の守り姫と謳われる彼女の名は海の兄弟に知れ渡っています。
 モンゴール再興の際に彼女は軍船10隻と約2千の兵を率い、ロス港を陥としている。
 トーラスに駆け付け、アムネリスと意気投合し義姉妹の誓いを立てたと聞きます。
 アムネリスに会わせろ、と先日から打診されているのですが。
 監禁同様の王妃と合わせる訳にも行かず、突っぱねていました」

 豹頭王の面に何故か苦渋の色、気遣わし気な気配が漂った。
 心中に過ぎるは悲しみの乙女、精神的自立を忌避する王妃シルヴィアの面影か。
「王子が誕生したと聞いたが、アムネリスは監禁されているのか?」
 晴れやかな海の表情がカメロンの面に現れ、グインの憂悶を洗い流した。

「御心配は無用です、我が友よ。
 アムネリス自殺の可能性もあったのですが、何とか免れました。
 現在は母子共々、クリームヒルドの塔で静養しています。
 グイン殿が派遣してくれた魔道師の御蔭で、精神的にも落ち着いていますよ。
 オリー母さんが傍に居てくれれば、赤ん坊の扱いも安心して任せられます。
 ダンの嫁さんにも、男女の双子が産まれましてね。

 自分と同じ様に初めての赤ん坊を抱える若い母親、相談相手が側にいれば心強い筈。
 共通する悩みを持つ女性同士、良い友となってくれるのではないかな。
 親戚でも居れば良いのですが、従姉妹の姫達は処刑されてしまいましたからね。
 弟も叔父も暗殺され、モンゴール大公家は1人も生き残っていない。
 苦楽を共にしたお気に入りの侍女が居る筈ですが、何処かへ失踪してしまっている。
 魔道師に調査して貰えば、発見出来るんじゃないかと期待していますがね」
 トパーズ色の瞳が瞬き、不可思議な色が虹彩を過ぎった。

「新都イシュタール北方に面するクリームヒルドの塔か、真に良い名だ。
 氷雪の女王から受けた恩恵を、イシュトヴァーンは忘れておらぬのだな。
 ヨツンヘイムを治めるクリームヒルドは、黄金の心を持つ真の女神だ。
 辛酸を舐めた母子を守護し、幸運を齎してくれるだろう。
 千年を生きた氷の女王、クリームヒルドには俺も多大な恩恵を蒙った。
 特に、目を開かせて貰った点でな。
 彼女の叡智に満ちた助言が無ければ、俺は未だに豹面の下の素顔を求め彷徨していただろう。
 中原の人界を避け獅子国シムハラを訪ね、南方暗黒大陸へ渡っていたかもしれぬ」

 優しく温もりに満ちた笑顔、暖かい微笑を投げ掛ける氷の幻影。
 氷雪の女王クリームヒルドの光り輝く笑顔が鮮明に、グインの脳裏へと蘇った。
 王家に生
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