case.4 「静謐の檻」
〜epilogue〜
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のだろう…。
今回、俺は一つの怪我もせずに済んだが、次はどうか…。俺のこの先に、どんな未来が待ち構えているかなんて分からない。なぜ俺の周囲で、こんなにも不可解な事件が起こるかも分かっちゃいないんだからな。
後になって分かったことだが、あの揺れ落ちた掛け軸…水墨画の下にもう一枚隠されていたものがあったのだ。
それには五芒星とラテン語らしきものが描かれていて、一種の護符の様だったと言う。かなり古いらしいが、なぜ描かれたかも水墨画の裏に隠されたのかも謎だそうだ。
だが、龍之介氏や尚輝氏は、このことを知っていたのだろうか?いや…今となってはもう聞きようもないが、そんな掛け軸があの壁に掛けられていたのならば、霊にとっては一種の檻のような役割を果たしていたのかも知れない。その掛け軸の効力が衰えて最初に犠牲となったのが尚輝氏だとすれば…それは辻褄が合うのではないか?一番近くに居たのだから、精神や肉体が不安定になったとしてもおかしくはない…。そうして半ば強引に檻を破ろうとした霊は、掛け軸の絵をかえしてこちらを見つめ、落とすことで意思表示した。それがあの事件へと発展したのだ。
しかし、これも結局は推測に過ぎず、この事件を完全に解明するだけの根拠はない。それはある種“科学的見地に依れば"であって、俺にしてみれば別に大したことじゃない。しかし、それを世の全ての人に受け入れろとは言わない。何も知らずに暮らし、何も知らずに逝く方が幸せかも知れないからだ。それがたとえ罪だと言われても…。
空は夏一色に染まって、それが過ぎれば高い秋の空へと変わる。そして冬が通り過ぎ、再び春が到来する…。
この幾重にも繰り返される四季の中で、俺は一人考え続けるんだろう。人が人である限り、霊はいつもその隙を狙っている。人は弱い生き物だからだ。だから…俺は音楽を奏で続ける。
今はまだ、それだけで充分だと思うから…。
case.4 end
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