不透明な光 3
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小さくなっていく幼馴染の背中を、ずっとずっと、見送っていた。
「あれ? レネージュ?」
村の出入り口付近で仕事道具を運んでいた男性が。
ふらふらと覚束ない足取りで戻ってきたドレス姿のレネージュを見つけ、どうしたんだ? と彼女に駆け寄る。
レネージュは暗い表情で、うつむいたまま。
「……あたし……」
屋敷の前で手を振っていたクーリアの姿が、頭から離れない。
書状をぎゅうっと握りしめ、唇を噛んだ。
「迷っているのですか?」
真っ白い服で全身を覆う黒髪の男性が、村人の横に立って問いかけた。
レネージュは、潤んだ瞳を男性に向ける。
「素直な心に従いなさい。それが貴女の道です」
柔らかな微笑みが、言葉が、レネージュの胸にすぅっと落ちて溶けた。
まくり上げたドレスの袖を膝の辺りで縛り、傷だらけの腕で顔を拭う。
「これ、村長に渡しておいて」
「え? ちょっ、レネージュ!?」
村人の胸に書状を押し付け、白い服の男性に頭を下げると。
レネージュは今来た道を引き返した。
一晩中、手酷く暴行されていた体だ。
今の状態で歩き回るのは、正直かなりキツい。
でも、そんなに長い距離じゃない。
「不本意だけど、あたしはもう、グリークの妻だもの! あたしには義妹を護る正当な理由と資格と権利があるわ!」
ヘトヘトになりながら辿り着いた屋敷の前で。
ずっとうずくまっていたらしいクーリアに、大声でそう宣言した。
銀色の髪の少女は、その時になってようやく貴族の仮面を外し。
レネージュの胸に飛び込んで、心のままに泣き叫んだ。
それから少し先の未来。
漁業と、魚類の皮や貝殻を使った工芸品の生産販売が盛んな小さな村で、紅い髪の未亡人が銀髪の幼い双子兄妹と戯れていた。
半分に割れた薄い緑色の貝殻のペンダントをそれぞれ首に掛けた双子は、木の上から望む水平線が大好きだったという。
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