不透明な光 3
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ん……、ごめんなさい……っ!」
「レネージュ様。どうか冷静にお聴きください。私にはもう、あまり時間が残されていないのです」
レネージュの顔が固まる。
「先ほどの話の通り私は発作を起こさなくなりました。ですがそれは、兄が私に生命力を分け与えていたからなのです。具体的な説明は難しいですが、兄に憑いた悪魔の力が、それを可能にしていたのだとか」
「……誰かから聴いたような口振りね。さっきも、教えられたって……」
不思議そうなレネージュに、クーリアは軽く頷いた。
「私は今日に至るまでずっと自分の内に閉じ籠り、耳目を閉じていました。何も見たくなかったし、何も聞きたくなかった。兄に体を弄ばれながら……もうどうでもいいと。考えることすら拒絶していました。ですが私にも声が聴こえたのです」
「声?」
「はい。滑舌が良く、耳に心地好く響く低い男性の声です。その声は私に、兄にまつわる一連の真実と、レネージュ様の危機を告げました」
「……で。アンタらがどうなろうと、俺にはまったく関係ないんだが……」
心の中で膝を抱えて丸くなっていたクーリアの耳に。
知らない男の声が、過去の出来事をささやいた。
その上で、こう言った。
「ちょいとワケありでね。手助けする気はないか?」
悪魔と兄が契約していたとか。
両親や使用人達が殺されていたとか。
そんなの知らない。放っておいて。
耳を塞いで縮こまるクーリアに、男の声がくつくつと笑う。
「紅い髪の幼馴染みが、アンタの兄を喰った悪魔に襲われていてもか?」
クーリアの肩が跳ねた。
紅い髪。幼馴染み。
憧れた、大好きな少女。
「……レネージュ、さま……?」
「今頃はお楽しみの最中だと思うが。殺されるまで放っておくか?」
クーリアは、恐る恐る顔を上げた。
大好きな少女が、自分と同じ目に遭おうとしている。
いや、既に遭っている。
兄に……兄の姿をした悪魔に、殺されてしまう?
「……どう、すればいいのですか?」
自分はどうなっても構わない。
でも、少女にまでこんな思いをさせてはいけない。
少女は苦しいばかりの生に囚われていたクーリアに差す唯一の光だった。
光を汚され、奪われるなんて。
そんなことは、断じて許せない。
「私の体はもう動きません。動かし方も分からないのです。私はどうすればレネージュ様を助けられるのですか」
男の声は、少し悩んだ様子で呻いた。
「んー……? そうだな。人間を砂時計に置き換えるとしよう。中の砂が魂、ガラス部分が生命力、そのフタであり支えである外枠が肉体だとする。砂時計自体は自力でひっくり返らず、砂が落ち切ればそれで終わり。つまりこれが人間の一
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