不透明な光 3
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アイツを、紅い髪の女を、徹底的に壊してくれ、と。
声は承諾した。
兄の魂を喰った悪魔は、解放された力で嵐を呼び。
村が所有していた船を全部破壊した。
漁師達が海に出られないように。村の生活が成り立たなくなるように。
少女から逃げ道を奪う為に。
「これが、私が知っていることと、教えられたことのすべてです」
体を清め、レモンの果汁を垂らしたハーブ水で喉を潤した後。
クーリア自身と彼女の母親が所持していたドレスに着替えた二人は、他に誰も居ない応接室でそれぞれ椅子に腰掛け、向かい合う形で座っている。
クーリアが落ち着いた様子で淡々と語った真実は、屋敷中の豪華な装飾を恐ろしい儀式の道具だと錯覚させるほど凍てついた内容だった。
レネージュの目から、涙がポロポロと溢れて止まらない。
「……あたしのせい……なの……?」
「いいえ、レネージュ様。貴女に罪などありません。すべては兄の……私達兄妹の所業なのです」
「でも、あたしがあなたに木登りなんてさせなければ、グリークは……っ」
「私が自分で望み、自分で選んだのです。面倒を見てくれていた両親ならばともかく、私と同じ立場の兄に私の行動をとやかく言う権利はありません。ましてや、私が起こした発作の責任をレネージュ様に押し付けて憤るなど。筋違いも甚だしい」
結局、兄が大切にしていたのは『一緒に育ってきた私』ではなく。
兄の不安を和らげる為の『可哀想な妹』だった。
自身の心を護る為だけに、私達の意思を蔑ろにし続けた人のことなど、貴女が気に病む必要はありません。
と、レネージュの肩を優しくさすりながら強い口調で断じるクーリア。
「それに、木の上から見る水平線。あの景色は今でも忘れられないのです。お忘れですか? また一緒に見たいと話しましたでしょう?」
「忘れてなんかいないわ! あたしはずっと、木の上で海を眺めるたびに、あなたを思い浮かべてた! あなたは線が細くて、綺麗で……、あたしの、憧れ、だったから……」
レネージュは自分をバカだと責めた。
グリークが村民のような仕事をしないのは、貴族だからだと思ってた。
クーリアが走らないのは、由緒正しい家のご令嬢だからだと思ってた。
二人が色白で綺麗なのも、時々日陰で横になっていたのも。
生まれや立場に基づく習慣の違いなんだと。
話を聴いた今になって、それらはすべて病気のせいだったと知った。
月日を跨いだ間柄、気付く機会なんて、いくらでもあった筈なのに。
レネージュは、兄妹を見ようとも、知ろうともしていなかったのだ。
「ごめ
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