case.4 「静謐の檻」
Y 7.3.AM10:49
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…?俺と相模は普通じゃないと言いたいのか?まぁ、それは考えないことにして…。
前に立つ男性はそれを佐野さんの了解と受け取り、俺達に「では、説明致します。」と言って向き直った。この男性も、そんなに素直に納得しなくてもなぁ…。そう思いつつも、俺と相模はその説明を聞くこととなった。
その説明は単純かつ、非常に奇っ怪なものだった。簡単に言うと、亡くなった吉岡さんの体…いや、骨には、全体に針金が巻き付いていたとの報告がなされていたのだ。検死官の取り出した針金は腐食もなく、真新しかったと…。
「どういうことだ?それじゃ、ついさっき…死ぬ直前にでも巻き付けられたってのか?そりゃ…有り得ねぇ話だな…。」
相模も蒼くなりながら呟いた。人間の思考の範囲で、こんなことが起こり得る筈は無い。
「恐らくだが…これには意味がある。無意味にこんなことが起きるなんてないからな。」
俺がそう言うと、呆然としていた佐野さんが口を開いた。
「藤崎君…。そりゃ何かの意図があったにせよ、なぜ生きてる人間の骨に…それも傷を付けずに針金を巻くなんてことが出来るんだ?正直な話、こりゃ警察…いや、現代のどんな事件を紐解いても、全く解読不能だよ。」
どうしようもないと言う風に、佐野さんは両手を挙げた。そう…今の段階では、どう動いてみようもないのだ。
もし、龍之介氏が亡くなっていて、その思いが今回の件に関連しているのなら…早く遺体を見付けなくてはならない。その遺体が…記憶の発信源になっていて、尚且つ霊の力の源になっているんだからな…。
「田邊君が何か情報を掴んでると良いが…。」
俺は一人呟いた。窓の外には澄んだ青空が広がっている。今年の梅雨は、殆んど雨らしい雨は無かったが、とてもこの快晴の青空を心地好いとは思えなかった。この青空の下、このままでは第二、第三の犠牲者が出るかも知れないのだ。
「佐野さん、僕らは戻ります。あちらでも少なからず知り得ることがあるかも知れませんし、ここに留まっていても解決しませんからね。」
「そうだな…。今日はもういい。ま、何かあったら携帯へ連絡入れてくれ。」「分かりました。それじゃ、帰ります。」
俺はそう言うと、相模と共に警察署を出たのだった。
外へ出ると、嫌味な程に雲一つない青空が広がり、下界とは違った閑な時を刻んでいた。まるで悪夢でも見て飛び起きた後に見た朝の光のようだった。
だが…これは現実で夢なんかじゃない。だから…次に起こるであろう事件を、何としても防がなくてはならないんだ。
だが…それは起きてしまったのだ…。もう少し早く…気付いていれば…。
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