case.4 「静謐の檻」
X 同日 PM3:16
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でこんなとこへいるんだ!?」
そう言って、彼は俺達のところへと歩み寄ってきた。
「いやぁ、懐かしいなぁ。」
「佐野さんは変わりませんねぇ。今はこちらへ?」
「ああ。今は警部に昇進したがな。」
「ええっ!?凄い出世したんですね。山桜事件の時は、あれだけ松山さんに怒鳴られてたのに…。」
俺にそう言われると、佐野さんは頭を掻きながら苦笑したのだった。
「そう言われると弱いがな…。いや、そんな昔話をしに来たんじゃないな。相模君がここへいると言うことは、何か事件性があるのかい?」
後ろにいた相模に佐野さんが問うと、相模は困ったような顔をし、俺を指差して言ったのだった。
「佐野さん…こいつが一緒ってこと、忘れちゃならないぜ?」
この相模の言葉に、佐野さんはその表情を露骨に変えた。
「まさか…それはないよな?」
そう佐野さんが言うと、既に調査を開始していた警官が佐野さんの元へとやってきた。
「警部。亡くなった女性は、やはり女将の話通り、この旅館で住み込みで働いていた吉岡薫子とみて間違いありません。吐血以外目立った外傷もなく、恐らくは内部から出血したものと考えらますが…。検死で詳細は分かると思いますが、死因は出血によるショックかと。」
警官の報告を聞き、佐野さんはいよいよ顔を青ざめさせ、俺達を振り返って言った。
「君達…明朝にでも署へ来てくれ…。一応…事情聴取するから…。」
そうか細い声で言うや、直ぐに警官へと振り返って指示を出し、後も振り向かずにその場を後にしたのだった。
「あいつ逃げたな…。」
「ああ…逃げたね…。」
そう俺達が呟いている間にも、周囲の警官は手早く仕事をしていた。検死官は既に仕事を終えた様で、遺体を運び出すよう指示していた。他の警察官は、別室で関係者に事情聴取をしているようで、周囲にいた野次馬達の姿も見えなくなっていた。
俺達が隅でそんな光景を見ていると、遺体を運び出すところで異変が起こった。
「痛っ!」
遺体を運び出そうと担架に移す時だった。一人が、どうやら何かで怪我をしたらしい。だが、遺体には怪我をする様なものなどない…。あれば検死官が気付いている筈だ。怪我をした警官も首を傾げて不思議そうにしていたが、直ぐ何で怪我をしたかが分かったようだ。
「おい…これ見てみろよ…。この遺体の手…。」
そう言われたもう一人の警官は、言われるままに遺体の手に視線をやると、その眉間に皺を寄せて言った。
「これ…針金か…?何でこんなもんが手から突き出てんだ?検死官はちゃんと見たのか!?」
その二人の警官は首を傾げながらも、遺体を慎重にタンカーに担架に乗せて運び出して行ったのだった。
「京…針金って…。」
「まぁ…前例がないわけじゃないよ。血管に無数の縫い針が入っていた遺体もあったって話だしな。
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