マブラヴ
1047話
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適性Sの俺と同じ速度で泳げる――しかも気や魔力を使わず――というのは……何というか、色々な意味で凄い。
身体能力と海適性Sで強引にこの速度を出している俺とは違い、大河内は長年に渡る練習の成果としてこの速度を出しているのだ。
さすがに元3-A組だな。
そんな風に思っていると、俺の隣を泳いでいる大河内と一瞬だけ視線が交わる。
普段は大人しい……どちらかと言えば引っ込みがちな大河内だが、今その目に浮かんでいるのは間違いなく闘志だった。
なるほど、水泳では絶対に負けたくないか。
ならこっちも受けて立とう。
水を掻く速度を上げ、バタ足の速度もまた上げる。
気や魔力は一切使っていないが、それでも俺の身体能力を考えればオリンピック級以上の速度は出ていた筈だ。
だが……大河内は相変わらず俺のすぐ横を泳ぎ、それどころか俺よりも少しずつではあるが前に進み始めている。
同時に背後から感じる気配を考えると、離されずに追ってきている者もそれなりにいるのだろう。
この辺はさすがにシャドウミラーと関係のある世界の者達か。
そんな風に考えつつもひたすらに泳ぎ続け、やがて息継ぎの時に海に浮かんでいるブイの姿が見えてくる。
大河内の姿は既に完全に俺よりも前を泳いでおり、半身近い差を付けられていた。
ちっ、このままだと負けるか? けど気や魔力が使用禁止である以上、純粋な身体能力で何とかするしかない。
そう判断し、一層手足に力を入れていき……ブイへと手が届こうとした次の瞬間、手にグニュリと何か柔らかいものが鷲掴みにされる。
「きゃあっ!」
聞こえてくる悲鳴の主は、大河内で間違いないだろう。
その悲鳴に慌てて泳ぎを止めて視線を向ける。
その際にも右手の中にある柔らかく巨大な触感を持つそれは、グニュリグニュリと俺の手の動きに合わせて形を変えている。
それが何なのかというのは、半ば本能的に理解していた。
毎晩触れているものに比べるとまだ少し固い弾力だが……
「あー……悪い」
思わずクロールから立ち泳ぎへと移って、そう告げる。
それと向き合うのは、頬を真っ赤に染めた大河内の姿。
俺にとって幸いだったのはその頬の赤が怒りではなくて羞恥だった事か。
「……えっと、その……えっち」
取りあえずそれだけを口にする。
よく考えれば、男女混合で競泳大会をやればこういうハプニングはあって当然だったんだよな。
まぁ、今みたいにあからさまなのはそうそうないだろうが、スタートした時のように団子状態であれば尚更だ。
「あー、悪い。その、わざとじゃないんだが」
そんな風に再度謝り、周囲にどこか気まずい空気が流れ……
「へへっ、何を止まってるんやアクセル。優勝は俺が貰ったで!」
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