恋に落ちる姉
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いと左側に傾ける。
…ん?
その不可思議な動作に、なんだか既視感を覚えて、あたしは石化状態から戻った。
『…決してキミを侮辱する意図があったわけではない。許して欲しい…』
男と会ったのは、今と、そして昨日の二回だけ。昨日、そうだ、別れ際に…。
「わあああああああああ!?」
近づいてきた男の顔をあたしはもぎゅりと両手で受け止めた。
お、おも、思い出したぞ!むしろなぜすっかり忘れていたのか!
だって前回、あたしはそれで逃げ出したのだから!
「なっ、な、なに、なにをするんですか!」
あたしは狙われていた首筋を押さえて、男から盛大に飛び退る。
「何とは…許しを…」
「ユルシ!?」
シリアスな気持ちもぶっ飛んで、あたしは悲鳴のように叫んだ。
そういえば前回もそんなことを言っていた。許して欲しいとかなんとか…。そうしてこの目の前の男は、あたしの耳の後ろに、き、き、キスしたのだ!
許して欲しいからって、なぜそんなことをする必要があるのか全く分からない。行動の因果関係が、一切掴めない。
言葉、言葉ありますよね!言ってくれれば、アタシ、ワカル!ダイジョブ、ワカル!
歩み寄ってきた男に逃げるより先に手首を捕まえられて、それがあたしの混乱に輪をかける。
どっひゃあ〜〜〜〜〜〜!
もうもう、頭の中が限界越えで思わずカタコトになるぐらいわけわかってないから、とりあえずこの場から一刻も早く逃げ出したいの、に!
「すまない。キミといると私は失礼なことばかりをしている。でも弁明をさせてくれ。逃げないと、話を聞くと言ってくれないか。今にもキミはここから去りたそうな顔をしている」
そうです全くその通りです…!わかってるなら手を離して欲しい…!
男は真摯に言い募る。
あたしは繋がれている手を振り解こうと何度も大きく振った。が、男の手は離れる気配が一向にない。
「逃げないでくれ。私は治療師だ」
その切羽詰まった声に、あたしの動きがぴたりと止まった。
え、今、なんて…。
あたしがまじまじと男を見ると、男は頷いた。
「知らないか。ラトゥミナは皆、治療師の力を持つ」
…し、知らない知らない知らないっ!
あたしはぶんぶんと首を振った。
ミナなんて、産まれてからこの方、出会ったことありませんから…っ!
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