恋に落ちる姉
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り、再び繋がれた手にどうしても意識は集中してしまう。
「…あんなところにいてはいけない」
「…え?」
先ほどよりも落ち着いた声で彼が何かを言ったけれど、進行方向を向いたままだったので、引っ張られるがままのあたしの耳では全く聞き取れなかった。
「金貨四十枚は治療費なのか。それだけの金額ということは命にかかわる傷なんだろう。家族のことが心配で仕方がない気持ちはわかる。だが、キミが自分を売って手に入れた金貨だと知って、果たしてその弟は喜ぶのか?」
…。
…えっと…。今、なんて?
男に言われたことがじわじわと染み入ってきたと思ったら、空っぽだった頭が一気に鮮明になった。
「ご心配いただきありがとうございます!」
受け答えもろくにできなかったのが嘘のように、あたしは繋がれていた手をはっきりと振り払った。なぜだかちくちくとする胸を押さえて唇をきゅっと噛みしめる。
あたしの変わり身を感じ取ったのか、男は進む足を止めて怪訝そうに振り返った。
「喜ぶも喜ばないも、関係ありません!ええ、それは喜ぶわけないに決まってるじゃないですか!あの子はとても優しい子ですから…。でも、じゃあ、この行きずりの町で、何の保証もないあたしが、他にどうやってお金を手に入れれば良かったと言うんですか!誰にも貸してもらえるわけもない、高価なものなんて何一つ持っていない、ただの小娘が金貨四十枚なんて大金…。…あたしは、どうしてもどうしてもあの子を助けたくて…やっと出会えたあの子を、もうこれ以上苦しめたくなくて…それで残っているものと言えば、もう…この体しか、ないじゃないですか…」
なんだか悲しい。とても悲しい。そうだよね、あんないい革靴を持っているような、髪に宝石を編み込んでいるような、金貨四十枚をぽんと出すと言ってくれるような身分の人には、お金がほしいから身を売るなんて、きっと理解できないし、侮蔑の対象に違いないんだよね…。
なんだろう、今すぐ、ここの人の前から逃げ出したい。誰でもいいから、あたしの体をここから隠してほしい。
わけのわからないやるせなさに口を真一文字に引き結んで俯いていたあたしは、不意にあたたかい腕に抱き寄せられた。
「…すまない。私の考えが足りなかった…」
さっきぶつかった厚い胸に今度は優しく抱きしめられている。そう気づいて息が止まった。後頭部を彼の大きな手が撫ぜる。
「キミの気持ちも考えず…。そう、だな。好きであんなところにいる子はいないな。すまない…許してくれ」
後ろの手が離れたと思うと、なぜか男はあたしの首をく
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