第二百十九話 九州に入りその五
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「前から攻められぬな」
「それは難しいですな」
「あの長槍相手では」
「どうにも」
「正面からは」
「そうじゃな、しかしじゃ」
ここまで見て話してだった、義弘は。
その強い光を発している目をさらに鋭くさせてだ、そのうえで家臣達にこうも言った。
「それでもじゃ」
「はい、我等は」
「何としてもですな」
「九州を全て手に入れる」
「それはですな」
「何としても」
「果たすぞ」
絶対にと言う義弘だった。
「ここはな」
「はい、では」
「それを信長公にもですな」
「お話して」
「そうして」
「認めてもらう」
こう言うのだった。
「何としてもな」
「では」
「絶対に」
「信長公にもお話しましょう」
「我等のその望みを」
「話で済めばよい」
それで、というのだ。
「九州が手に入るならな」
「では」
「そうしてですな」
「若し信長公が認めて下さらねば」
「その時は」
「仕方がない」
既に頭の中に入れている言葉だった。
「何としてもじゃ」
「ですな、では」
「その覚悟もしたうえで」
「これより」
「信長公と」
こう密かにだ、彼等の間で話しつつだった。義弘と島津の主な家臣達から成る使者達は太宰府の信長の本陣にまで入った。
そしてだ、その本陣においてだった。
まずは信長と会った、義弘達は天満宮の中にいる信長に深々と頭を下げた。そして頭を上げてからだった。
義弘は恭しくだ、信長に言った。
「この度はお目通りをお許し頂き」
「堅苦しい挨拶はよい」
信長はその義弘に笑みで返した。
「それはな」
「左様ですか」
「うむ、ここに来た訳を聞きたい」
こう義弘に言うのだった。
「単刀直入にな」
「ですか、では」
少し話をすると思っていた義弘には想定外だった、だが物事を簡潔に進めたがるという信長の性格を聞いていたので納得はした、それでだ。
あらためてだ、こう信長に答えた。
「我等のお願いですが」
「領地のことじゃな」
「九州をお任せ下さい」
実に率直に言ったのだった。
「この地は全て」
「そう言うか」
「はい、天下は望んでおりませぬ」
このこともだ、義弘は信長に話した。
「全く、ですが」
「九州はじゃな」
「九州は我等が治め」
そして、というのだ。
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