第二百十九話 九州に入りその三
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「戦になろうともな」
「して上様」
藤堂の目は鋭いものだった。
「戦には」
「なる」
このこともだ、信長は確実と言った。
「島津は退かぬわ」
「やはり九州を、ですか」
「己のものとしたいからじゃ」
「それ故に」
「それには後一歩じゃしのう」
「余計にですか」
「ここは退かぬ、我等と戦になってもな」
例えだ、そうなろうともというのだ。
「戦を仕掛けて来るわ」
「九州を手に入れる為に」
「その時は勝つ」
やはりこう言う信長だった。
「そして薩摩と大隅だけとするわ」
「そうですか、では」
「まずは島津の使者を待つ」
必ず来る彼等をというのだ。
「よいな、その間も戦の用意をしておくぞ」
「畏まりました」
織田家の本陣のある太宰府は今は落ち着いていたが戦を念頭に置いていた。そのうえで今後の成り行きを見守っていた。
そしてだ、信長の言う通りだった。
島津家から使者が来た、その者は。
島津家の次男島津義弘だった、その義弘が来たと聞いてだ。
丹羽もだ、眉を顰めさせて言った。
「何と、島津家のか」
「うむ、次男のな」
滝川がその丹羽に答える。
「あの者が来た」
「それはまた大物が来たのう」
「島津家はな」
「四兄弟が動かしておる」
主の家の彼等がというのだ。
「当主の島津義久を軸としてな」
「そうじゃな、その次弟島津義弘は」
「まさに島津家の副将」
「その副将が来るとはな」
「島津家も本気じゃな」
「本気で話をしにきたわ」
織田家と、というのだ。
それでだ、滝川も剣呑な顔になり丹羽に言った。
「刃を交えぬがな」
「戦になるな」
「上様は会われるとのことじゃ」
その義弘と、というのだ。
「そしてな」
「九州のことが決まるな」
「戦になるぞ」
滝川は丹羽にこうも言った。
「五郎左殿もそう思われておるな」
「無論、島津は退かぬ」
丹羽もこう答えた。
「この九州を全て己のものとしたい」
「そう考えておるからな」
「戦になるわ」
「そうじゃな、ではな」
「奇妙様もご承知じゃ」
織田家の次の主、そして次の天下人と言われている彼もというのだ。
「ではな」
「戦の用意じゃな」
「この間もな」
こうしたことを話してだ、そしてだった。
織田家は義弘を迎えた、この時だった。
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