巻ノ七 望月六郎その四
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「私はこれから飛騨に向かうけれどね」
「飛騨にか」
「そうだよ」
その通りだというのだ、女は幸村の問いに答えた。
「岐阜から北に行ってね」
「あの国はかなり険しいが」
「それはもうわかってるよ、そこから越中に行くのさ」
「そなた一人でか」
「そうよ」
「ふむ、女の脚であの山を越えるとは」
飛騨のその険しい山々をというのだ。
「御主、普通の旅芸人ではないわ」
「あら、そう思うのかしら」
「女一人でそんなことは出来ぬ」
幸村はその目を強くさせて女に言う。
「そう思うが」
「ではこの者も」
「これまで会って来た者達と同じく」
穴山達五人も言う。
「忍ですか」
「何処かの」
「違うと言っておくよ」
女は笑って述べた。
「私の名前は舞音、笛を使う旅の巫女さ」
「そう言っておくか」
「少なくとも今はお侍さん達とは何もないよ」
敵ではないというのだ、むしろ味方でもない。
「そのことは安心していいよ」
「今はだな」
「そうさ、まあこれでお別れだよ」
女、舞音はそこから先を言わせなかった。
「それじゃあね」
「岐阜に向かって越中か」
「そこに行くよ」
その飛騨の山々を越えてというのだ。
「楽しみだよ」
「ではまた会おうぞ」
幸村はこう舞音に言う、これを別れの挨拶をしてだった。
そしてだ、舞音はというと。
幸村がこれまで歩いていた道を彼等とは逆の方向に進んでいった。するとその彼女の周りにだった。黒い忍装束の者達がだった。
出て来てだ、そして彼女に言って来た。
「音精殿、あれがです」
「真田幸村殿です」
「わかってるよ、雷獣達がもう会ってるね」
「はい、雷獣殿も双刀殿も」
忍達は舞音に次々に話していく。
「お会いしています」
「伊賀十二神将の他の方々も」
「幾人かの方が」
「私と同じことを思ったろうね」
その目を鋭くさせてだ、舞音は忍達に話した。
「私と」
「真田殿と周りの御仁達について」
「音精殿と同じことをですか」
「思われましたか」
「そうだろうね、幸村殿は強いよ」
真剣そのものでの言葉だった。
「それも相当にね」
「ではその強さは」
「一体どの程度でしょうか」
「私達より上かもね」
舞音は真剣そのものの声で言い切った。
「周りの連中が私達と同じ位だよ」
「何と、天下で風魔と並び称される伊賀者の中でも最強の十二神将とですか」
「同じ位で、ですか」
「そして幸村殿はですか」
「それ以上だと」
「まさかと思うけれど」
こう前置きしてだ、舞音は言った。
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