巻ノ七 望月六郎その一
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巻ノ七 望月六郎
幸村達はその橋に近付いていた、その道中でその橋にいる武芸者についてだ、彼の相手をすることが決められた根津が言った。
「さて、その武芸者がどういった者か」
「うむ、何でも忍術まで使うというがな」
その根津にだ、由利が応えた。
「その腕がどれだけか」
「気になるな、しかし」
「しかし?」
「仮にも弁慶の様にしておるからにはな」
「それだけにか」
「うむ、相当な強さであろう」
このことは間違いないというのだ。
「その者はな」
「そうか、しかしその者が天下無双の豪傑なら」
「それならばな」
「やはりその者も」
「うむ、拙者も考えておる」
幸村も言うのだった。
「強いだけでなく心も確かでな」
「そして殿の家臣なってもいいというのなら」
「是非にじゃ」
「我等と同じくですな」
「家臣としたい」
こう根津に答えるのだった。
「まことに今は一人でも優れた者が多い」
「真田家が生き残る為に」
「その為にですな」
「一人でも多く優れた者が殿の家臣となり」
「戦い家を守る必要がありますな」
「左様ですな」
「うむ、戦なぞないに限るが」
幸村は五人の問いにも答えた。
「しかしな」
「戦を仕掛けられたならば」
「その時は戦うしかありませんな」
「例え望まずとも」
「相手が攻めて来るならば」
「刀を手にするしかありませぬな」
「その通りじゃ」
まさにというのだ。
「降りかかる火の粉は払わねばならぬ」
「確かに。しかし」
幸村の言葉を聞いてだ、海野が目を閉じ言った。その間も足は止まっていない。
「世はわからぬものですな」
「信長公の下定まろうとしていたのがじゃな」
「その信長公が討たれ」
そしてというのだ。
「天下が再び混沌とし信濃もわからぬ様になりました」
「世は先がわからぬ」
それも全くとだ、幸村は言葉の外にこうした言葉も入れた。
「まさに一寸先は闇じゃ」
「闇ですな」
「よいことになるか悪いことになるか」
それこそとだ、幸村は穴山にも話した。
「全くわからぬ、人にはな」
「神仏ならともかく」76
「人の力なぞちっぽけじゃ」
こうも言う幸村だった。
「先が見える様でな」
「見えぬものですか」
「そうじゃ、ある程度は見えても」
それでもというのだ。
「全ては見えぬ」
「だからですな」
清海も腕を組んで難しい顔になって言う。
「信長公のことも」
「そうじゃ、拙者も天下は定まると思っておった」
信長が天下人になり、というのだ。
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