26部分:第二十六章
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蝶の色は紫です」
「紫・・・・・・」
その言葉を聞いた瞬間カクテルを見た。その紫のカクテルをである。そのカクテルは青がかった透明な紫であるが彼女は今聞いた紫には別の紫を感じていた。
「そうです。それが実に綺麗な紫でして」
彼は上機嫌でそう語る。
「一度見たら忘れられません」
「そう、紫なのね」
沙耶香はその紫を自分でも呟く。
「その色もダリにしては珍しい色みたいね」
「そうです。だからこそ印象的で」
「わかったわ。紫ね」
「はい」
「何もかもね」
バーテンからもカクテルからも絵からも視線を外す。そのうえで妖しく微笑んだ。
「何もかもといいますと」
「いえ」
だがそれ以上は言おうとはしなかった。言葉を一旦は抑える。
「何でもないわ。安心して」
「はあ」
「けれど。紫の蝶ね」
「そうです。本当に綺麗な紫で」
「わかったわ。それじゃあね」
その言葉を受けて述べていく。
「今日はその紫に乾杯ね」
「紫にですか」
「ええ。マドリードの紫に」
にこりと笑って述べる。
「乾杯させてもらうわ。いいわね」
「ええ。でしたら」
「貴方に一杯ね」
「奢って頂けるのですか」
「絵を教えてくれた御礼よ」
うっすらと妖艶な笑みを浮かべて述べる。
「だから。貴方にも」
「ブルームーン=カクテルですね」
「そうよ。それでいいわね」
「喜んで。それでは」
「ダリの絵に」
ここで杯を合わせてそして。
「乾杯」
そう言葉を交あわせた。そのうえで遅くまで酒を楽しむのであった。心地よい紫の酒を。
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