第一話 二人の聖王と一人の覇王
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あるんだい? てか持ち歩いてるのか」
「魔力を込めると重くなる仕組みなので普段は五キロ程度です。 持ち運び楽々、いつでもトレーニング出来ます。 教科書より軽い物を鞄の中に入れるなんて考えられません」
五十キロの文字が刻まれたダンベルを小指でクルクル回す幼馴染??アインハルト・ストラトスの脳筋発言に言葉を失う。 覇王の直系イングヴァルト家の人間だから仕方ないと思っていたが、最近は血筋とか関係無しにアインハルトは純粋に脳筋なんだと直感的に感じることが増えた。 困ったら直ぐ覇王断空拳を使って問題解決を図るのはイングヴァルトの血よりアインハルトの脳筋が強く影響しているんだろう。
会話の時間も惜しいのか、ダンベルの数を増やしてジャグリングし始めたアインハルトに姿の見えない陛下の居場所について尋ねる。 心配してくれるその気持ちは嬉しいが、陛下をいつまでも心配させておくわけにはいかない。
「アインハルト、陛下は今どこに?」
「ヴィヴィオさんなら家じゃないですかね。 あまりの泣きっぷりだったのでリオさんとコロナさんを呼んで帰宅を推奨しましたから、二人がヴィヴィオさんを慰めながら家に帰ったと考えるのが妥当でしょう」
「......そんなに?」
「あの大号泣でなぜ目覚めなかったのか疑問に思う程度には。 よかったですね愛されてますよ」
失態だ。 陛下をそこまで悲しませていたとは。
僕は陛下を守れて満足してても、悲しませてしまったらまるで意味の無い行動になる。
逆に陛下を傷つけているだけ。 咄嗟のこととはいえ、もう少し場に合った判断を出来てもよかった。 それを可能にする能力が自分には備わっていた。 魔法を使えば陛下も僕も安全にことを済ませられたが、規則を破ってはいけない??この考えが判断を鈍らせた。 間違った行為ではないにしろ、柔軟な判断の出来なかった頭の固さには悩む。
欠点はご先祖様譲り、か。
「手当てしてくれてありがとう、アインハルト。 僕は陛下の家に行くよ。 心配させたこと、謝らなきゃ」
「礼には及びません。 それより聞いた話ではあなた謝る必要無いですよね。 むしろヴィヴィオさんがあなたに謝る点の方が多いような」
「陛下を心配させた時点で罪なんだよ。 少なくともオリヴィエ陛下の加護で存続してきたシルトブレヒト家としてはね」
「......つまりあなたはシルトブレヒト家としてヴィヴィオさんに謝ると」
アインハルトの目つきが鋭くなった。 ダンベルジャグリングを止め、此方をじっと見つめてくる。 幼馴染だからよく分かる、この反応。 アインハルトは??怒ってる。
ああ、これはボクの言い方が悪かった。
「言い方悪かったね。 陛下には”イゼット”として謝るつもりだよ。
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