第一話 二人の聖王と一人の覇王
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ら手を離してグッと手を握りしめている。 こちらは心臓をグッと握り締められている気がしてならない。 あと何気に空挺まがいのことを可能だと言ってるあたりやはりオリヴィエ陛下の遺伝子を持っている人だと窺える。 見よう見まねでエレミアの技を扱うオリヴィエ陛下と同じく見よう見まねで空挺の真似事をしようとする陛下。 どちらも天才の部類だ。
「陛下が大丈夫と言うなら大丈夫ですね。 その言葉を使う限り、あなたは失敗しません。 さあ、どうぞ」
各指から虹色に輝く十本の魔力糸を生成し、陛下の跨る太い枝に結びつけ、束ねる。 膨大な魔力から生み出される簡単には千切れない、強靭な魔力糸の完成。
がんばる、と全身から満ち溢れる自信を原動力に陛下は危なげに枝から離れ、魔力糸に掴まる。 魔法でも料理でも一度見れば完璧にコピーする陛下なら、魔力糸に掴まったその瞬間に成功が約束される。 後は陛下が大地を踏むのを待つだけ。
「あ、猫さん??」
残り三メートルほどの位置で黒猫が陛下の頭から飛び降りた。
もちろん陛下はそれを見事にキャッチした。 見事な反射神経だと思わざるを得ない。
しっかりと”両手”を使ってキャッチした陛下を??
「??!!」
黒猫を抱えたまま頭から落ちる陛下を認識した瞬間、言葉にするよりも先に、身体は動いていた。
◆
目を覚ませば白い天井。 視界の端では見慣れた幼馴染が顔を覗き込んでいた。 特に心配してるような表情ではなく、真顔だった。 感情表現を上手く出来ないのを抜きにしても完璧な真顔だった。 だがその表現からは”何があったか早く説明しろ”という無言の圧力を感じたので、短く経緯を説明する。
「??で、落ちてくるヴィヴィオさんのクッションになろうとしたら、勢い余って木に激突。 ヴィヴィオさんは無事であなたは額から流血、衝撃で気絶ですか」
「陛下が無事だったなら額からの流血なんて安いものさ。 大した怪我じゃないしな」
「陛下が無事だったらそれでいい? その陛下は”イゼットくんが死んじゃう!”って大泣きしてあなたを保健室に運んで来たんですよ。 守るべき存在を大泣きさせるってどうなんですか?」
「うぐっ......」
陛下の安全を最優先にクッションになろうと飛び込んだら木に額をぶつけて、額から生温かい液体の流れるのを肌で感じ意識が飛んだ。 自分で説明しながらなんとも情けない奴だ。 今時、漫画の主人公だってそんなギャグシーンは見せない。
「まったく......シルトブレヒト家の名が泣きますね。 普段のトレーニングを怠るからこうなるんです。 このダンベルを貸してあげますからトレーニングしなさい、今すぐに」
「おいおいアインハルト、このダンベルなんで五十キロも
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