プロローグ――ひねくれ剣士
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俺が剣を鞘へと納めると独特な音が夜の荒野に響いた。
その音はどことなく風情があるような気がして、聞いていると幻想的な世界にいる気分になる。
幻想世界の住人は現実の世界の事など忘れてしまうのだろう。
そこはきっと心地よくて、他のどこよりも自分のためにある世界のはずだ。それならどれほど素晴らしいことだろう。
しかしそこはあくまで幻想。まやかしでしかない。その世界からはふとしたことで連れ戻されてしまう。誰であろうと例外無く、突然に。
俺は忘れていたことが有ったのを思い出し、幻想の世界から引きずり降ろされた。
「大丈夫か?」
俺はあわてて後ろで倒れている少女に振り向き尋ねた。
問われた少女は返事をするでもなく無言で起き上がる。そのまま、俺の前方に転がる4人の青年をその青い瞳で見つめていた。その時の彼女の悲しそうな表情が俺の視界から離れられずにいる。
少しの間呆然としていると視界の隅で4人の青年が無数の青いポリゴンに変換され始めたのが映った。
宙に浮かぶポリゴンはまるで吸い寄せられるかの様に天へと向かっていく。俺たちはただそれを無言で見ていくことしかできなかった。
ポリゴンが空へと消えていくその様が、あの世界同様、俺の目には幻想的な物に見えていたからだろうか。
俺は言葉にできない感動を覚えていた。
やがてポリゴンが見えなくなるといつの間にか地べたに座っていた彼女は小さく吐息を漏らす。俺は彼女を見ると幾ばくかの間の後、ため息とは違う小さな息を漏らした。
「どんな命でも同じくらい儚くて、……」
独り言の様に呟く彼女の言葉を俺は黙って聞いていた。彼女は更に続ける。
「必死に生きようとした魂は、きっと……」
そこで一旦止めると彼女は空を見上げた。
何かあるのかと釣られて俺も空を見上げる。しかし、そこには何もなかった。それでも不思議と見入ってしまうような魅力がある気がする。
何もない空に見とれていると、不意に彼女の言葉が耳に届いた。
「必至に生きようとした魂はきっと……強くて美しいんだと思う」
それきり言葉がない空間は一陣の風が薙ぐだけだった。
◆◆◆
「うーん」
懐かしい夢を見ていたような気がする。
目を醒ますと木造の部屋に居た。どうやら眠ってしまっていたらしい。
室内の床は円柱状の丸太が何本も紐で束ねられている造りとなっている。壁も似たような造りとなっていて、一般的ログハウスのイメージと大差ない。ベットの他には小さな窓ガラスとこれまた小さめの机が設けられているくらいの簡素な部屋だ。
ふと昨日の事を思い返すと昨晩は珍しく我が家に帰っていた事を思い出し、この家で寝ていたこと
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