プロローグ――ひねくれ剣士
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いやぁ典型的な悪党のリーダーと子分だなぁと俺は他人事の様に眺めていた。
ラピスは人差し指を顎に当て何やら思案している。この場に居座れば厄介事に巻き込まれるのは目に見えていた。ならここはさっさと立ち去るのが無難だろう。
ラピスには悪いがそもそも俺がここに連れてこられたのもこいつのせいだ。別に無理してこいつに付き合う義理はないはずである。なら別に逃げても悪くは無いだろう。
決まったのなら行動は早い。俺は抜き足差し足で後ろに後ずさり始めた。ラドンと呼ばれた男とその取り巻きはラピスの返事を今か今かと待ちわびている。子分の方は落ち着きがないのか右足を小刻みに動かしていた。どうやら二人とも俺の異変には気付いていないようである。
対するラピスは未だに何か考えている様だ。こうしてまじまじと見ていると意外と可愛いな、とか下らない思考が頭をよぎるから極力こいつのことは見ないことにしよう。何にせよこちらに気付いている様子は無かった。
妙な剣幕との距離はおよそ50センチ。このまま一秒辺り10センチも動いてやればものも5秒で1メートルもの距離が離れる。そこまで離れればさすがにバレるだろうが時既に遅し。そこから全力でダッシュすれば追い付ける者は居るまい。
俺のステータスは素早さの部分にかなり枠を割いている。それに一応攻略組に属するのだからの並みの連中よりはレベルも高い。そうそうの人物では俺に追い付けるわけがないのだ。
そんな事を考えながらも1秒、また1秒と時は進んでいく。現在の距離は80センチ。後2秒後に走れば誰も追い付けない。ラピスには悪いが俺はエスケープさせてもらうぜ。俺が内心で高笑いを決めた瞬間、嫌な予感がした。だがあと2秒だ。行ける、いや行かなくてはならない。
徐々に焦り始めた俺の心境を知ってか知らずか時間は無情にも過ぎていく。残り一秒、10センチ。俺が辺りへの警戒心を強めていたその時、文字通り目にも止まらぬ早さでラピスの腕が俺の襟を掴んだ。驚いたのも束の間、ラピスは腕を引き寄せると俺は喧騒の中へと引きずり戻された。
「ぐへっ」
引きずり戻された際ラピスの手が喉にヒットし、たまらず変な声が出てしまった。
その様子を見てクスリと笑った彼女は俺を解放すると男たちを見上げて俺を指差した。
「こいつにデュエルで勝てたら遊んでも良いよ♪」
何てことだ。案の定面倒な事態に巻き込まれてしまった。
「ラピス」
俺は彼女に恨めしそうな視線を向けるも「ニヒヒ」と笑うだけで特に詫び入れるつもりも無いらしい。
俺は嫌そうにため息を吐いてから諭すように言った。
「別にお前を助ける必要は無いだろ?勝手に連れてこられて勝手にデュエルしろって言われて、断る権利位はある
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