プロローグ――ひねくれ剣士
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神などいやしないだろうがな。
もしいるとするならばこのゲームの制作者である、茅場明彦その人物になるだろう。
俺達が今いる世界、VRMMORPGソードアートオンライン。プレイヤーが実際にゲームの世界に入ったように遊ぶことができるゲームである。「ゲームであって遊びではない」というキャッチコピーに惹かれ、ソードアートオンラインを買った訳だが、そのゲームの製作者が茅場明彦ということなのだ。
しかもその茅場明彦、あろうことかこのゲームをゲームでの死が現実の世界での死になるというデスゲームと化してしまったのだからお節介極まりないどころか最早犯罪である。
脱出する方法はただひとつ。百層にいるボスを倒しこのゲームをクリアすることだという。だから俺はこうしてこのゲームを攻略するグループ、所謂攻略組というやつに加わって日夜暗い迷宮区に入り浸っているのだ。
はてさて、そんな風に俺達を苦しめる茅場さんは警察にでも捕まったのか否か、今の俺には知る由もない。
意味のない思考はタンスにでも仕舞っておくとしてさっさと顔を洗いに行こう。もっとも顔を洗うという行為でさえ電子空間であるこの世界において意味などない。要は気分の問題である。
俺はオープンと書かれたボタンをタップした。すると自動ドアであるかのように勝手にドアが奥へと押し出される。わざわざこんな機能を使わなくても手動で開けれるのだがそれすらも面倒くさく感じるくらい今は気だるい。朝っぱらから鬱陶しい奴に絡まれるし最悪だ。
そういえばあいつ今日はやけに早く引き下がったな。いつもならあと3回くらいは電話してくるんだが。
不思議に思っていると扉がゆっくりと開かれる。部屋の外を見てみると目の前には一人の少女が居た。
全体的に醸し出しているボーイッシュな雰囲気だけを見るならば彼女は女性には見えないかもしれない。
「やほー。さっきぶり」
唐突に現れた彼女はそんなことを抜かした。ピンク色のボブを揺らして首を傾けると小さく右手を振りはじめる。
普段は紺色のローブを纏っているのだが今日はフィールドに向かうつもりがないのか紫色のパーカーに黒のプリーツスカート、黒色のタイツと随分俗っぽい恰好をしていた。
むしろゲームなのにこんな恰好を用意していることに驚くべきなのかもしれない。そんじゃそこらのゲームではそもそも私服なんてデータを入れている物は無く、ほとんどのRPGは装備用のグラフィックを用意しているくらいである。
そんな中で裁縫スキルさえ獲得していれば服を手作りすることができるのだからプログラムを作った人物に感心せざるをえない。
といっても俺は私服なんて用意してなく、部屋や町では普段装備しているコートを脱いだ程度の格好だ。
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