出発と契約
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」
「分かってるよ。僕は君の主神だからね。あと式。もしもの時はあの魔法の使用を許可しておく」
「……マジですか?」
あの魔法というのは王の軍勢で間違いないだろう。
俺の命の危険を感じたとき以外では、バルドル様かハーチェスさんの許可なしで使うことを禁止された魔法。
「【ロキ・ファミリア】に見せることになりますよ?」
「だろうね。ただ、僕は情報漏洩どうこうよりも、眷族の身の方が大切だからね」
「バルドル様……」
「それに、そう思っているのは僕だけじゃない。ハーチェスもエイモンド、このファミリアの皆が思っていることだよ」
ね、と微笑んで見せるバルドル様。
なんと温かいのだろうか。心地よいのだろうか。
包み込むような優しさが身に染みる
「……バルドル様」
「ん? どうしたんだい?」
「俺、このファミリアで良かったです」
「……フフ、そういってもらえると、神様冥利につきるね」
ちゃんとお帰りって言わしておくれよ? と念を押されて、俺はバルドル様の部屋を出た。
「ええ。必ず。ただいまって言わせてもらいますよ」
誰もいない廊下でただ一人、俺の声が闇に消えていった。
ーーーーーーーーーーーー
「それでは、行ってきますねバルドル様」
「ああ。気を付けるんだよ」
翌日、つまり【ロキ・ファミリア】との遠征の日。
肩の袋に四つの得物を入れてバベルに向かおうとする俺を皆が玄関口まで見送りに来てくれていた。
「皆さんも、行ってきます」
「うん。頑張ってね、式」
「ハーチェス様のことなら任せておきなさい」
「気落ちしたら、筋トレするといいっすよ!」
「……しっかりな」
「気張ってこいよ」
「体には気を付けてくださいね」
「フッ、暫く帰れないんだろ? なら、今のうちにこの僕の美貌を目に焼き付けておくことだ」
「あ、あの、式さん! ファイトです!」
そうやって声をかけてもらうなか、俺は皆に手を振って出発した。
時間的にそろそろ【ロキ・ファミリア】と【ヘファイストス・ファミリア】が集まってくる時間のはずだ。
遅刻するのは流石に印象が悪いと思い、少し歩を速める。
フィーネさんももうそろそろ来るだろう。【ロキ・ファミリア】の人達に宣伝する約束をしてるからそれもやらなければ。
ーーーーーーーーーーーー
式が急ぐなか、【ロキ・ファミリア】の面々はすでに中央広場に移動していた。
装備品と物資を積んだ大型のカーゴを何台も伴い、バベルの北門正面から距離をおいた場所で待機していた。
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