怪物祭 (上)
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詰めて剛腕を伸ばした。
その光景をテュールは立ち上がった状態のままで見ていた。
(妾は何故こんな目に合っている?)
テュールからすればまさにこの展開は急転直下、晴天の霹靂だった。
愛すべき子供達とともに怪物祭に行くはずだったのが、今では、死、否天界への強制送還される状況に陥っている。
(妾が約束を破ったからか)
昨日のうちに帰るというタイムリミットを大幅に超過したからかとテュールは考えた。
(確かに、妾は眷族との大事な約束を破った――じゃが、眷族達はそんな些細なこと気にしなくていいと言ってくれはずじゃ)
しかし、テュールはそれを否定する。
(なら、妾が何をしたというのじゃ!妾はまだここにいたいだけじゃ!!まだあの二人といたいだけなのじゃっ!!)
目前まで迫った緑色の巨大な掌に目をつむって、テュールは心の中で叫んだ。
「テュールーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
その意思に呼び込まれたようにテュールは自らの眷族の声を聞いた――そして、聞いたが早いか、体を包み込むような感触と同時に衝撃が駆け巡った。
そして、一瞬の浮遊感の後に、誰かと固い地面を転がっている感覚を数秒味わった末に自分が下になって止まったのを知覚した。
「大丈夫かっ!」
声に目を開く。
次の瞬間視界が揺れる。
自分に覆いかぶさるのは自分の眷族。
その眷族の輪郭が涙であやふやになる。
「大丈夫じゃ…………約束破ってすまぬな」
「何のことだ!」
「一緒に行くという約束じゃったのに」
「そんなことどうでもいい!早く逃げないと!」
デイドラは起き上がると、自分に手を差し伸べてくれた。
(ほらな?どうでもいいって言ってくれたじゃろう?)
その手を握りながら、テュールは誰に対してかは定かではない台詞を心中に呟き、涙を拭いながら笑む。
起き上がらせてもらうと、デイドラの背後に獲物を奪われて怒り狂うトロールが迫り来ていた。
しかし、テュールは全く焦っていない。
(妾はまだこの下界にいたいと思おたから、デイドラが救いにきてくれた。なら、妾が妾とデイドラが生き残ると思えば、生き残るのじゃ!)
トロールがLv.2の部類のモンスターも知らず、何の根拠もなくテュールは確信していた。
「捕まって」
そのテュールの内心を知らずにデイドラは死に物狂いの思いでテュールを、今どこぞの白髪の冒険者しているように、横抱きに抱えて、駆け出した。
『グルァアアアアアアアアアアアッ!!!』
その後を不必要に壁を破壊しながら突き進むトロールが追う。
◇
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