第二十一話
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無くなってしまう。この際だから力の加減を覚えることにも重点を置こう。
お互いの間に夜風が一陣、吹きぬける。それを開始の合図と捉え、私は一気に間合いを詰める。もちろん感覚的にはLv.1程度の力で、だ。
まだ私の中で燻っている『根本的に勘違いをしていて、レイナは普通の冒険者だった』という可能性を確かめるべく、ベル相手に放ったものより更に穏やかな攻撃を放った。
対するレイナは開始時の構えのまま不動を貫き、私の放った鞘にようやく視点の照準を合わせたところ。
もしかしたら本当に勘違いだったか。そう思った、次の瞬間だった。
ゾッ、と。背筋が凍てついた。ダンジョン内で何回も味わったことのある、命の危機を察知したときのように。
「ッ!!」
声にならぬ声を漏らし、力の加減を忘れて思い切り後方へ跳躍した。呆気なく城壁の床が踏み砕かれ礫が宙を舞う。その隙間から氷のような冷たい光沢を放った穂先が垣間見える。それを視認してようやく己の身に迫っていた危機を理解した。
突かれていた。私が油断したその時に。動きに着いて来れていないと思ったその瞬間を逃さず。
思い出したように背からどっと汗が噴出す。長く感じる跳躍を終え着地した私は銀槍から目を離すことが出来なかった。
見えなかった。いつ突きを放とうとしていた? 踏み込む足は? 力む腕は? 目標を定める目線は? 見切りに置いて必要な条件全て、見えなかった。
釘付けにされた私の視線を払うように穂先を下ろしたレイナは、少し挑発気味な笑みを浮かべて言った。
「余計な手加減は必要ないよ。足加減は必要だけどね」
私が踏み抜いた床をぺしぺし槍で指し示しながら構えに戻る。
今の一合でさっきまで抱いていた下らない杞憂は吹き飛ばされた。女性冒険者最強と言われるまでに上り詰めた私に一泡食わせられる人はそういない。私は一級冒険者以前に一流武術家でもある。たとえ油断していたとしても相手の初動を見逃すほど腐っていない。それをこうも容易く出し抜いてみせた時点で、レイナの力量の一端が覗いているようなものだ。
私の中の意識が切り替わったことで、急速に場の空気が張り詰め始めた。ぴりぴりと幻聴すら聞こえそうだ。
こくりと唾を飲み下し、再び突進。ただし、今度はLv.2くらいの出力で。
ぐんと縮まったレイナとの距離は、しかし、途中でぴたりと停止してしまう。やはりぴたりと穂先で捉えられてしまっているからだ。
ならば、こうだ。
ギリギリLv.2くらいの力で、レイナの間合いのすぐ傍をぐるぐる駆け回る。槍の最大の武器は間合いだ。それを最大まで引き出せれば並みの使い手では歯が立たなくなると言う。ならば、逆に返してしまえば、その間合いさえどうにかしてしまえば槍の利点
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