第二十一話
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城壁の上である。ベルとの密会にも使っている場所だ。
そろそろ遠征が迫っていることもあってかファミリア内が張り詰めつつあるなか、朝早くに抜けて夜遅くに帰ってくるアイズを心配するメンバーも数多い。そこから詮索されて密会がばれてしまえば双方共に迷惑を掛けてしまうのは必至だが、それでもアイズは知りたかった。
ベルに感じる既視感と、レイナに感じる可能性を。
「お待たせ、かな」
キンと涼やかな音に振り返れば、バックパックを抱えたレイナが、闇夜に輝く銀槍を地に突いて立っていた。
本人曰く十三歳に相応しい無邪気な容姿に、子供らしいと言えば子供らしいがどこか大人びえた雰囲気のある口調が、レイナの不思議な佇まいを際立たせる。
幼い子を深夜に呼び出して戦闘訓練してくれ、だなんて非常識ここに極まれりだが、レイナもレイナで深夜くらいしか時間が空いてないとのことだ。早朝はベル、正午はレフィーア(今日そういうことになってしまった)の訓練の面倒を見なければならないアイズとしては大助かりだ。
「ううん、ちょうど今来たところ。じゃあ、よろしく……お願いします?」
一級冒険者が下級冒険者に手ほどきを受ける、奇妙な絵図が完成した。
◆
「まず今朝も言ったけど、私は正統な剣術とか槍術の心得は無いから、コレといった訓練方法とか知らない。だから、とにかく私と打ち合って、そこからアイズの知りたいものを探し出して」
「解った」
ようはベルとの訓練の立場が入れ替わっただけだ。
私から教えることなんて無いと思うんだけどなぁ、とぼやきながらバックパックを隅に置いて槍を構えるレイナ。
私の身近で槍を使う人と言えばフィンくらいだ。駆け出しのころフィンから戦闘を学んでいた身としては、フィンの奨めで槍の心得を少しだけ持っている。槍に関してはまだまだ素人の身だけれど、レイナの構えは一目見て意外なほど普通なものだった。
と言うより、戦闘を何も知らない一般人に槍を持たせたらこんな持ち方をするだろうなぁ、という感じの構え方だ。
剣術に身を置く者として言わせてもらえば合理的な面もあれば、不合理な面もある。あやふやにして曖昧、歴然とせず画然とせず。そんな印象だ。
どこか肩透かしを食らった気持ちで、ともかく、私は愛剣の鞘を自然な力で握り締めて、その先端をレイナの首元に突きつける。
ベルとの訓練で学んだ通り、私は力加減が下手だ。ベルは神の恩恵を受けていたからまだ良かったものの、今回は無所属の少女だ。うっかりミスった、で済まされる話では
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