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ソードアート・オンライン〜Another story〜
現実世界
第121話 変わらぬ想い
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、やっぱり……ね。はぁ……、もどかしいね……。思い出せないのって……」

 隼人はそう呟きながら ため息を吐いた。

「………」

 そんな隼人を見て源治は、その頭にそっと手を置いた。

「んっ……」
「坊ちゃん……。少しずつ……少しずつで良いんですよ。無理しようとすれば、今回の様になってしまいます。ですから落ち着いて……。坊ちゃんは疲れているのです。十数年もの間にも、ずっと常人以上の頭脳で、そしてずっと脳に働きかけていたんですから……疲れてしまったのですよ……。もうちょっと、もうちょっと休めばきっと、良くなります」

 微笑みかけながらそういった。常人以上に頑張ってる事は、自分自身がよく知っているから。

「うん……そうだね。深く考えないようにするよ。彼……和人君とも……やっぱり違和感はあるんだけれど、話してみようって思ってるんだ」

 隼人はそう考える。
 よくよく考えれば今までの事から考えられない変化だった。これまで隼人は他人との関わる事など仕事以外では殆ど無かったはずなのだ。和人という少年と話をしてみたい。と思った事だって普段から考えればありえない事だった。

 ジムにも、リハビリの関係で来ていただけなのに……だ。だが、隼人はわかっていた。

 自分を変えたのは恐らくはあの≪空白の時間≫。そして、その≪空白の時間≫に全ての答えがあると。考えようとすれば、頭の……脳髄の奥から稲妻が落ちたかのような、衝撃と痺れる感覚に襲われる。

 それは、本当に苦しい。

 でも、思い出したくない……と言う訳ではなさそうなんだ。その思い出に嫌な感じはまるでしないからだ。


 ……何か、大切な何かを忘れている気がしているんだから。


「そうですか……。お体にだけはご注意してください」

 この隼人の変化は爺やにとっては喜ばしい事なのだ。初めに思っていた事だ。何か……出会いがあって、信頼できる仲間が出来れば。友達が出来れば……とずっと考えていたのだ。

 そして、以前から思っている自分の歳も若くないと言う事実も。だけど……。


(坊ちゃんの後遺症……それだけが気がかりですから……)


 綺堂が思うのは、隼人の身体の事、それが何より第一だったから。


 そして、その日は過ぎ去っていった。




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