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ソードアート・オンライン〜Another story〜
SAO編
第120話 朱い空の下で
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いた。
――……あの男のせいで、こんな事態になった。
――……あの男のせいで大勢の人たちが死に追いやられた。
だけど……。
――……あの男のおかげで現実では見れないものが視れた。
――……あの男のおかげで現実では手に入れられないものが手に入った。
――……あの男のおかげで……親友が出来、愛すると言う人間らしい感情が理解する事が出来た。
この世界に閉じ込められた殆どの人は、多分こんな風には思えないだろう。きっと、誰もが恨んでいる筈だ。そして、それが正しい事だって、リュウキには判っている。だけど、こんなに穏やかな心になってしまえば、仕方が無いと思える。
「ん―――――……。」
リュウキは自然と口ずさんだ。
この美しい景色を見ていたら……そう言う気持ちになったから。それは、家族が……爺やが自分によく歌ってくれた子守唄の様なもの。幼いながら何度も聞き、そして初めて覚えることが出来た歌。
……これは一番……好きな歌。
―――……彼女に、みんなに捧げたい。
だからこそ、彼は自然と口ずさんでいたんだ。そして記憶を揺り起こし、爺やの姿を思い浮かべる。
何度も思い描いたその顔を。
「(爺や……)」
もう、帰れない、もう……会えない。それはおそらく決定事項だろう。……先ほどメインウインドウも確認した。そこには、装備フィギュアやメニュー等は一切なく、ただ小さな文字で一行だけあった。
《最終フェイズ実行シークエンス》
とだけ、書かれていた。
おそらくは、侵攻段階は判らないが、処理が進めば ナーヴギアが電磁波を発動させ、脳死にまで直結するシステムだと言う事は容易に想像がついた。そして、自分ではそれを防ぐ事は出来ないだろう事も判った。システムコアである故に。
―――……でも、僕は何一つ悔いは無いよ。爺や、本当だよ。
それは、リュウキは、はっきりと思えていた。ただ、その想いを、皆に伝えられないのが、心苦しかった。死んでしまえば、残せられないから。死にゆく者の想いを。……仮想世界の為、遺書だって残す事も出来ない。親にも、親友達にも、愛する人にも。
……後、数秒後には、現実でモノ言わぬ姿に変わっているだろう。
だけど……、それでも、本当に悔いは無い。
でも、願わくば、仲間の皆が爺やに言って欲しい。何も教えていない。それでも、何か奇跡のような事が起きて、出会う事が出来て、そして、……自分は悔い無く逝けた事を伝えてくれれば嬉しい。本当に。
……そして、最後に。
――……最後は、レイナを、皆を、……育ててくれた爺やを想いながら……教えてくれたこの歌を口ずさんで、穏やかな心のまま、逝きたい。……き
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