暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百七十一話 奔流
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話



帝国暦 490年 3月 13日  オーディン 新無憂宮  エーレンベルク元帥



「イゼルローン要塞を奪回したか、先ずは重畳」
リヒテンラーデ侯は上機嫌だ。
「ヴァレンシュタインは不機嫌でしたな」
私が言うとリヒテンラーデ侯が不思議そうな表情をした。

「軍はイゼルローン要塞の反乱軍を降伏させるつもりでした。しかし要塞はその前に反乱軍によって放棄されていました」
「なんと、では逃げられたか……」
そう言うとリヒテンラーデ侯は笑い出した。笑い事ではないのだがな。シュタインホフ元帥も渋面を作っている。

「いや、許せ。あの男でも思うように行かぬ事が有るとは……、反乱軍もなかなかやるではないか」
侯の笑い声は益々大きくなった。
「笑い事では有りませんぞ、国務尚書閣下。反乱軍の指揮官はヤン・ウェンリー、かつてローエングラム伯を大敗させイゼルローン要塞を奪取した男です。ここで捕殺する予定だったのですが……、厄介な男が逃げました」
シュタインホフ元帥の言葉にようやくリヒテンラーデ侯が笑うのを止めた。

「なるほど、あの男か」
侯は二度三度と頷くと“確かに厄介な男が逃げたようだ”と言った。
「油断は出来ません。フェザーン方面にも影響が出ております」
「本来ならフェザーン方面の反乱軍はイゼルローン要塞陥落に慌てふためく筈でした。しかしヤン・ウェンリーが撤退した事でフェザーン方面も撤退に入っております」

予定では混乱する反乱軍にかなりの打撃を与える事が出来た筈だった。戦線は崩壊しただろう。だが現実には反乱軍は損害を出してはいるが秩序を保って後退している……。私とシュタインホフ元帥の言葉にリヒテンラーデ侯も顔を顰めた。

「それで、ヴァレンシュタインは今どうしているのだ?」
リヒテンラーデ侯が私とシュタインホフ元帥を交互に見た。
「要塞をシュトックハウゼンに任せ残りの艦隊を率いて反乱軍の領内に向かっております」
シュトックハウゼンに要塞を任せるとはヴァレンシュタインめ、なかなか粋な事をする。

「イゼルローン要塞の反乱軍は民間人を引き連れております、そのままでは戦闘は出来ません。彼らを何処か安全な場所に連れて行き分離する筈です。その隙にヴァレンシュタインはハイネセンを目指します」
私とシュタインホフ元帥の答えにリヒテンラーデ侯が頷いた。

「フェザーン方面の事をもう少し詳しく話してくれぬか」
「既にフェザーン方面第一軍はフェザーン回廊の出口を確保し第二軍、第三軍は撤退する反乱軍を追っております。第一軍はこれからフェザーン制圧、そして回廊、補給路の警備、帝国領内の治安維持に任務を切り替えます」
“そうか”とリヒテンラーデ侯が言った。

「フェザーンから私の所に通信が入った」
フェザーンから
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ