閑話―猪々子― 上
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た。
「猪々子、お前の一撃はすごい……だがそれだけだ」
「っ!?」
何故自分が負けたのだろうかと、顔から出ているのを感じ取った夏侯惇は指摘する。
猪々子の大刀による一撃は確かに脅威だ。受けに回れば武器ごと弾かれ大きな隙が出来るだろう。それを本能的に感じ取った夏侯惇は回避する事を選択し。その過程で弱点さえ見つけ出した。
「難しいことは言えんが、なんかこう……剣に振り回されている感じだ」
「……」
その言葉に口ごもる猪々子、彼女にも薄々それはわかっていた。
これまでの鍛練で猪々子は、大刀による一撃に力を注いできた。それは確かに強力な一撃を放つことに成功したが、当たらなければ意味が無い。一撃一撃に全力を振り絞る斬撃は、避けられたり外したりすると僅かに隙が出来る。
通常の兵になら問題は無いが、夏侯惇のような一騎当千の強者にはすぐに見破られ、その隙を突かれてしまう。
猪々子は己が短所を理解し。その模擬戦からは初心に帰り素振りを始めた。結局、夏侯惇から一本とることは出来なかったが、猪々子達が南皮に帰って来た頃には、大刀をまるで手足のように扱えるほどにまで成っていた。
そして彼女が今まで力を入れてきた一撃は、『大刀一閃』という奥義に昇華した。
愚直なまでに拘り続けた努力は、無駄にはならなかったのだ。
彼女の努力は武芸大会で実を結ぶことになる。重さと速さの両立に成功した猪々子の剣戟は夏侯惇を苦しめ、奥義を持って彼女に勝利した―――
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