閑話―猪々子― 上
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つければ良いだけじゃん?」
その言葉に唖然とする二人、それほどまでに自分が言うのは意外なのだろうか、と猪々子は頭に浮かべたがそれはすぐに消え去った。
袁紹と斗詩の表情から憑き物が落ちる感じがしたのだ。
「ありがとう、二人とも」
「麗覇様……」
「へへっ」
袁紹から憂いが消えている。それを察した斗詩も同調するように頬を緩めた。
それを確認した猪々子は照れくさそうに、だが満足そうに笑う。
「ところで麗覇様、傷物になった斗詩の責任はとるのか?」
「ブフォッ!? 猪々子!!」
そして唐突に爆弾発言をする。本来であれば他にも話す事がある。しかしそれはそれ、これはこれ、憑き物が落ち隙が出来たのを本能的に感じ取った猪々子は、ここぞとはかりに畳み掛けた。
「ぶ、文ちゃん!? これはそんな傷じゃないから!!」
「そん時はアタイも頼むよ麗覇様!」
「ええっ!? 文ちゃん!!」
その後、三人で他愛も無い話しを朝日が昇り始める頃まで語り続けた。
それから数日後、猪々子は袁紹から礼として料亭に連れてこられた。
「なぁ麗覇様、アタイ何かしたっけ?」
「以前掛けてもらった言葉で我は目が覚めたのでな、これはその礼よ」
「…………何を注文しても」
「かまわぬ」
その言葉に「よっしゃあ!!」と料理を注文していく、彼女が連れてこられたのは南皮でも有数の高級料亭で、その値段からとても普段の自分が手の出せる物ではない。
良くも悪くも遠慮の無い猪々子は端から端まで注文、引き攣った笑顔の袁紹を他所に、幸せそうに胃袋に納めた。
「麗覇様……ちょっといいか?」
「……む?」
運ばれた料理を全て平らげ一頻り満足そうに目を細めた後、猪々子は姿勢を正し袁紹に対面する。
彼女のその様子に唯ならない雰囲気を察し。袁紹は顔を引き締めた。
「アタイは麗覇様に謝らなければいけない事、聞かせたい事があるんだ」
「聞こう」
猪々子はぽつぽつと話し出す。あの日自分勝手な理由からその場を離れたこと、そのせいで到着が遅れ間に合わなかったこと、動転して斗詩にしか意識が向かなかったことをつぶさに話した。
「でさ、アタイは誓ったんだ」
ただの家臣ではなく、真の忠臣として自分を高めたい。主である袁紹が躊躇する事無く自分に命を下せるようになりたいと聞かせた。
「……そうか」
「……」
「猪々子がどこか我に一線引いていること、何となくではあるが感じていた」
「っ!?」
「そして我も……どこか一線を引いていたらしい。本来であれば三人の中で一番の使い手であるお主を連れて行くべきであった。なのに残し
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