閑話―猪々子― 上
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は半狂乱といった形だ。服に血が付着していたが特に外傷は無い。
そして落ち着きを取り戻した女性から話しを聞いた瞬間、猪々子は飛び出すようにわき道に入る。彼女の話しが本当なら二人は―――
「っ!? 麗覇様!!」
「……猪々子」
奥に進むと袁紹の姿が確認できた。その周りには暴漢らしき者達が物言えぬ姿で倒れている。そしてその中には――斗詩の姿もあった。
「斗詩……斗詩ぃぃぃ!!」
慌てて彼女の側に駆け寄り抱き起こす。そして袁紹に目を合わせた。
何を訪ねたいのか悟った袁紹は口を開く
「斗詩は無事だ。気を失っているが額の傷は浅い。……あまり揺らすでない」
「…………良かったぁ」
それから少しして駆けつけた警邏隊の者達と協力して斗詩を運び。他の者達に現場を任せ袁紹とともに彼の屋敷へと戻った。
「……」
袁家の屋敷の一室。斗詩が安静のため睡眠をとっている部屋で猪々子は悔いていた。
自分勝手な都合で現場に急行しなかったのもそうだが……、何よりも主を後回しにして考えていた事だ。
屋敷に戻る道中で掻い摘んだ話しを聞くと、袁紹は初めて人を手に掛けることを躊躇し。その結果斗詩が怪我を負うはめになったらしい。
その懺悔のような説明を自分は殆ど聞き流していた。無事だとわかっていても親友の安否が気になったのだ。それからの道中は無言だった。主に掛ける言葉はいくらでもあったのに……
こうして親友の安らかな寝顔を見ていると冷静になる。そしてそれと同時に袁紹のことが気になったのだ。
思い返してみれば何かを耐えるような顔をしていた。きっと罪悪感に苛まされているのだろう。
「うっ……ち……きしょお……」
己の不甲斐無さ、情けなさに涙が出る。
そもそも自分が現場に急行していればこんなことにはならなかったのだ。
袁紹や斗詩とは違い猪々子には実戦経験がある。最も、賊退治に勝手に付いて行った末での成り行きでだが、それでも経験があることには変わりない。袁紹や斗詩が手を汚さずとも自身だけで片付けられる自信もある。
それなのに、それなのに自分は―――
独りよがりな理由で得物を取りに行った挙句、返り血を浴びて放心している主を他所に親友を気遣い。終始目線を合わせることも出来なかった―――忠誠を誓ったにも関わらずだ!
斗詩に対する想いを理由に妙な対抗心を抱いていた。袁家次期当主で男として、親友を娶れる立場にある彼に嫉妬すらした。それでも心から忠誠を誓ったのだ。斬山刀を授けられたあの日から
「……」
涙を拭った猪々子は静かにある誓いを立てる。『忠臣』として自身を高めよう――と。
一見今まで通りだが実は違う。そもそも袁紹が
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