閑話―猪々子― 上
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な武器を振り回せるほどの腕力はあるが、彼女達が今まで使っていたのは普通の剣だ。
力加減がいまいち解らず隙だらけとなっていた。袁塊は袁紹との模擬戦を通して熟練度の低さを二人に伝えたのだ。袁紹の側近で護衛でもあるのに不慣れな得物で万が一を迎えるわけにはいかない。
手に馴染むまでは今まで通りの剣を帯剣する事を義務付けた。最初はそれに渋っていた猪々子も、袁紹との模擬戦で手も足も出なかったため了承した。
「麗覇様強かったね。文ちゃん」
「ふ、ふん! 同じ得物ならアタイが勝ってたね!」
「それ、完全に負け惜しみだよ?」
「…………だよなぁ」
初日の鍛練を終え二人で帰路につく、話題に上がるのはやはりと言うべきか袁紹との模擬戦だ。
武に自信のあった猪々子は力を示すことで袁紹の気を引こうと画策していた。自身の魅力に自覚が無いことと、いまだに幼い故の浅知恵であったが、この件は彼女の胸に深く残り、いつかこの斬山刀で派手に活躍してそれを見せ付ける―――特に邪念の無い目標が出来た。
そしてその好機は数ヵ月後に訪れる。
袁紹の提案で街を散策する事になったある日、途中で見つけた屋台で食事をしようと並んでいた時だ。突然袁紹が斗詩を伴ってわき道に入って行った。
「……」
猪々子は屋台で二人の分も購入するようにと待機を命じられたが、血相を変えた袁紹の様子にただならない何かを感じた。それにわき道に入るとき彼は帯剣をわずに掴んでいたのだ。このことから何かの厄介ごとだとわかる。犯罪者でも発見したのか、はたまた暴徒の類か、どちらにせよ武に頼らねばならない場面のようだ。
「…………よし」
猪々子の中である欲求が湧き上がった。それは以前から画策していた斬山刀での活躍だ。
今は手に無く、普通の武器を帯剣していたが、現在地点から猪々子の屋敷は近い。取って戻ってくる余裕があると判断した。
心配があるとすれば二人が相対する敵の規模だが、袁紹は模擬戦で自分をあしらうほどの腕があるし。斗詩の武は自身と同等に近い。万が一など起こりえない。
猪々子はそう決断を下し自宅に向かって駆け出した。
「はあ、はあ、……クソ!」
斬山刀を背に戻って来るまで想像以上に手間が掛かってしまった。剣を鍛冶屋に手入れのために預けていたことを途中で思い出し来た道を引き返したのだ。すでにかなりの時が経っている。
もう事は終わっている可能性が高い。だが何やら胸騒ぎがする。これは斬山刀を取りに行く前には感じなかったものだ。
「誰か、お助け下さい!」
「な!? どうしたんだ!」
ようやくわき道に差し掛かったところで奥から女性が一人飛び出してきた。その様子
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