閑話―猪々子― 上
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へ〜、実は麗覇様から貰ったんだ!」
「貰った!? しかも今のは袁紹様の真名でしょ!?」
「噂通りの人だったよ、なんか気に入られたみたいで真名も交換してくれたんだ」
頬ずりしそうな勢いで大剣を撫でる猪々子。そんな彼女の様子に少し呆れながら母親は頬を緩ませた。
「この分だと孫の顔を見れそうだねぇ……」
「は? 孫??」
「だってそうだろ? 会って間もない猪々子に真名を預けた上に、そんな業物まで授けてもらったんだ。相当あんたを気に入ってくれたんだねぇ」
「……それがどうして孫の話しになるんだ?」
「あのね猪々子、あんたは女で袁紹様は男だ。異なる性別の二人が一緒にいて行き着く先なんか決まっているだろ?」
「ないない。大体斗詩も一緒だし」
自分が彼の立場なら迷わず斗詩を選ぶ、あっけらかんとそう言ってのける猪々子に対して母親は溜息を吐く、この残念な娘は自分の魅力には無頓着だ。
確かに女らしさという面では彼女の親友に軍配が上がるだろう。しかし、斗詩が女性らしく清楚だとすれば、猪々子は活発で情熱的だ。毛色が違うだけで魅力は劣っていない。
むしろ今のような時代では愛娘の方が魅力的なはずだ! 親馬鹿を交えた自論を頭の中で展開させた母親は、猪々子にとって転機となる言葉を落とす。
「それに、袁家次期当主ともなれば側室の一人や二人――「その手があったか!」わっ!?」
ありがとう母ちゃん! と言葉を残し猪々子は自室に入る。何故急にやる気を出したのかわからないが、これで孫の顔を見る可能性があるのなら……と母親は深く追求しなかった。
「……」
場所は変わって猪々子の自室、彼女は先ほどの母親の言葉で妙案を思いついた。
袁紹の『お手つき』になることだ。女として魅力的な斗詩は正室でなくともいずれ袁紹と関係を持つだろう。そこに同じく『お手つき』となった自分が割り込む、うまくいけば流れで斗詩を愛することができ――
「グフフ」
乙女とは思えない笑い声を洩らしながら猪々子は、己の欲望のため袁紹の側室を目標に定めた。
「うりゃあああああ!」
「えーーい!」
その翌日、袁紹の剣術指南をしていた袁塊を新たな師として、斗詩と猪々子の両名は鍛練していくことが決まった。その一環としてさっそく袁紹と模擬戦をしている。
「甘い!」
「うわわっ!?」
「きゃっ!?」
二対一にも関わらず袁紹は二人を圧倒する。本来であれば彼女達のほうが腕は上だが、昨日今日新たな武器を使い始めた者に遅れを取るほど半端な鍛え方はしていない。
「いってて……持つのと振るのじゃあ違うな……」
「うー……体ごと持っていかれるよう」
重厚
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