閑話―猪々子― 上
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、キラキラと反射して輝いている。
「お早うございます父上、……この娘達は?」
近づいてきた彼と目が合う。鷹のように鋭い瞳、その視線は自分達の内面までも見透かそうとしているようで、端正な顔も相まって恐ろしいほど妖美な光を放っている。
「は、初めまして、私の名は顔良、真名を斗詩と言います!」
「アタイは文醜、真名を猪々子だ!……です」
先に自己紹介した親友に続いて声を出す。事前に母親と練習していたが対面の緊張もあり、妙な言葉遣いになってしまった。
「そうかお主達が……、知っていると思うが我が袁紹だ。初対面で真名を預けてよいのか?」
「私達は今日から袁紹様に仕えるので」
「主になる人に真名を預けるのは当然!……です」
「ふむ、ならば我が真名、麗覇も二人に預けよう!」
「ええっ! いいんですか?」
袁紹様の言葉に斗詩が驚いた声を上げる。無理も無い。本来真名とは神聖で特別なものである。伴侶にしか許さない者もいれば、親族にしか許さない者もいる。
ましてや相手は名族袁家の次期当主だ。これですんなりと真名を受け取れる方がどうかしているであろう。
「かまわぬ、我もお前達が気に入ったし何より――真名を受け取って返さぬのは我の矜持に反するのでな、フハハハハハ!!」
「「……」」
豪快に笑う袁紹を二人は唖然としながら見つめ、一足早く意識を取り戻した猪々子は傍らに目を向ける。
そこには頬をわずかに上気させた想い人の姿があった。
(袁……麗覇様は噂通りの人かぁ、あーあ斗詩奴、嬉しそうにしちゃって〜)
少なくとも人徳ある主のようだ。仕える立場としては文句の付け所は無い。
しかしそれによって大事な親友を取られるのは……、猪々子は複雑な思いだった。
「やったぁ、さっすが麗覇様そこに痺れる憧れるー!!」
猪々子の複雑な胸中はあっという間に吹き飛んだ。その理由は、中庭で談笑していた時の話しの流れにより、得物に難儀している自分に袁紹が掛けた言葉がきっかけだ。
『では、我が側近になった記念として二人に武器を授けようぞ!』
自身に合う得物が無いと悲観していた猪々子に対し。豪快な提案をする袁紹。
他の者であれば適当な相槌をして終わりだろう。そもそも愛用の得物探しなど個人の問題だ。
しかし袁紹は思案し提案した。それも即座に解決できる方法をだ。これから武器を貰えるのもそうだが――、初対面である自分の小さな悩みを真剣に考えてくれた。猪々子にはそれがなによりも嬉しかった。
「たっだいまー母ちゃん! さっそくだがこいつを見てくれ……どう思う?」
「すごく……大きいわね、どうしたのそれ?」
「へっ
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