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ダンジョンに復讐を求めるの間違っているだろうか
怪物祭、当日
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 「遅い」
 「…………まったくだ。昨日のうちに帰ると言っていたのだが」
 「一番楽しみにしていたのに」
 「そうね」

 デイドラの所在なさ気な呟きにノエルは首肯し言い、リズが悔やむような顔で追従して、ミネロヴァは淡泊に一言だけ口にする。
 現在地は【テュール・ファミリア】のホーム。
 時刻は八時半を回ったところ。
 テュールが椿の工房で目覚めるおよそ三〇分前のことだ。
 デイドラとノエルは普段着だったが、リズとミネロヴァは張り切っているのか、リズは起伏の乏しい体を白のセーター生地のチューブトップとジーンズ生地のホットパンツで包んでいて、ミネロヴァは起伏が激しい体を胸元にフリルが連なった限りなく黒に近い暗紫色の豪奢でありながら上品な風合いのドレスで包んでいた。

 「テュール様がどこに行ったかわからないんですか?」
 「ああ、ただ秘密としか言わなかった」
 「あの、テュールのことだから何してるか何となくわかるような気がするのだけれどね」

 と、ノエルとリズ、ミネロヴァの三人が会談するのを遠いことのようにデイドラは一人時が止まったように微動だにしていなかった。
 彼の耳には未だにあの幾千の声がうねりこだましていた。
 昨夜からずっと聞こえていて、眠りにつこうとするデイドラには、それは子守唄の対極にあるようなものだった。
  父の声、母の声、姉の声、兄の声、妹の声、幼馴染みの声、近所の老爺の声、老婆の声、よく知らない村の外れに住んでいた男の声、会話などしたことのない遠くで暮らしていた女の声、様々な声が怨嗟となって彼に押し寄せていた。
 しかし、理由はわからないが、唐突にそれらの声は遠ざかり闇に消え、精神的に困憊だったデイドラは張っていた糸を緩めると、そのまま深い眠りについた。
 そして、起きた翌朝、彼の耳には夢のように朧げな声を聞いていた。
 それは昨夜のように生々しいものではなく、その余韻、残響のようなもので、感情はそこには介在していなかった。
 それを耳にデイドラは思索に耽っていた。

 (これは、あのときの夢の続き?)

 デイドラは一番に二日前の夜のことを思い出していた。
 夢にうなされていた自分をノエルが抱きしめてくれたあの夜を、デイドラは夢の内容も含めて忘れられずにいた。
 自分を包む炎の海と怨嗟の声は今でも確かに鮮明に覚えているが、それよりもあのときノエルに抱きしめられた感触や温もりの方が体中に今でも鮮明に感じられた。
 そのことを思うデイドラは恥ずかしさに、それと懐かしさに自分の頬まで熱を帯びていくのを感じていた。

 「デイドラ、大丈夫か?顔が赤いぞ」
 「わっ」

 そんなことを思っているときにノエルの顔が突然に間近かに視界に飛び込んできて、デイドラは飛び上がりよ
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