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黒魔術師松本沙耶香  紫蝶篇
16部分:第十六章
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たわ」
 影達はそれを受ける。そのまま沙耶香の影の中に溶け込んでいく。街灯により幾つにもなっている薄い影達に入っていくのであった。
 それが終わると沙耶香の前に今度は速水が姿を現わしてきた。カードを右手に持ち左手をポケットに入れた姿で歩み寄ってきた。
「五十人でしたね」
 速水は沙耶香にこう言ってきた。
「私の調べたところでは」
「こちらもよ」
 沙耶香はその言葉に応えて自分も数を言った。
「同じ数だったわ。五十人」
「そうですか。では間違いないですね」
 速水はその数を聞いて言う。二人は今夜道にいた。そこで相対していたのであった。
「攫われた女の子達の数は」
「そうね。そして問題は」
 沙耶香は言う。
「彼女が。何処にいるのかね」
「さしあたっては自分から出てくれるかも知れませんがね」
 カードを出してきた。それは太陽のカードであった。タロットカードの十九番だ。再会を表わす場合もある。無論逆だとその意味はかなり異なってくる。
「このカードを見ると」
「貴方のカードなら確かなのでしょうね」
 沙耶香はその太陽のカードを見て述べる。
「では今夜にでも」
「はい。ではその場所は」
「感じるわ」
 沙耶香は闇の中に照らされながら述べてきた。
「彼女の気をね」
「しかもこれは」
 それは速水も感じた。左の髪の下が黄金色に輝いていた。
「いるわ」
「はい」
 二人は頷き合う。
「場所は」
「プエルタ=デル=ソルね」
 マドリードの中心部であり繁華街である。二人はそこに気配を察していた。
 そうとなれば話は早かった。二人はすぐに側にある暗闇の中へと溶け込んだ。そのままプエルタ=デル=ソルへと出たのであった。


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